カントリーハウスホテルで映画のワンシーンのようなひと時を! 【イギリスの正統派アフタヌーンティー】

公開日 : 2022年05月24日
最終更新 :
季節ごとに変わるアフタヌーンティー(イメージ画像) ©Hand Picked Hotels
季節ごとに変わるアフタヌーンティー(イメージ画像) ©Hand Picked Hotels

イギリスには王室が所有するお城(キャッスル)や宮殿(パレス)の見学を目的にした観光地が数多くありますが、貴族や領主といった富裕層がその昔住んでいた、マナー(manor)ハウスやカントリーハウスと呼ばれる屋敷も全国に散在します。なかでも2022年3月に訪れた「ナットフィールド・プライオリ・ホテル(Nutfield Priory Hotel & Spa)」では、カントリーハウスの雰囲気を感じながら、クラシカルで正統派スタイルのアフタヌーンティーを楽しむことができます。

カントリーハウス型ホテルに特化したホテル経営グループ「Hand Picked Hotels」

カントリーハウス型ホテルに特化したホテル経営グループ「Hand Picked Hotels」
テラス席はこれからの季節にピッタリ ©Hand Picked Hotels<br />

「Hand Picked Hotels」は、カントリーハウスを宿泊施設に改装したホテルを多く取り揃え、イベント調査会社が主催するブランドコンテスト(BVA BDRC VenueVerdict survey 2021)で、「もっともおすすめのホテルブランド」として、2020年より2年連続で金賞に選ばれた人気ホテルグループです。今回利用したナットフィールド・プライオリ・ホテルはそのうちのひとつ、ロンドンを南下したサリー州のレッドヒルにある、“カントリーハウスホテル”です。

カントリーハウスとマナーハウスの違い

カントリーハウスとマナーハウスの違い
カントリーハウス型のナットフィールド・プライオリ・ホテル ©Hand Picked Hotels

カントリーハウスとマナーハウスは、どちらも広い庭園を持つ屋敷で、とてもよく似ています。そのため、近年増えてきたこのような形態のホテルでは「マナー・カントリー・ハウス」ホテルや、「マナー・ハウス・カントリー」ホテルなどと名乗るところもあります。

カントリーの方がより広範な定義で、単に田舎にある豪邸を指し、中世の封建領主の館であったマナーハウスも、カントリーハウスの一種となります。

上から眺めたホテルのロビー
上から眺めたホテルのロビー

ただし、マナーハウスには要塞としての機能をもつものもあり、特に大広間が当時の緊迫した状況を少しでも和らげるため、政治目的に使われたり、社交場として活用されたりするなど、重要な役割を担っていました。

その後戦争を心配しなくてもよい、平和な時代が訪れるとこれらの要塞化されたマナーハウスは、似たような機能を持ち合わせた小規模な城とともに住居用に増改築されるなど、田舎に広大な土地を所有する裕福な貴族やジェントリ(大地主)たちの邸宅へと姿を変えていきました。

石造りのアーチ型天井が雰囲気のあるレストラン ©Hand Picked Hotels<br />
石造りのアーチ型天井が雰囲気のあるレストラン ©Hand Picked Hotels<br />

さらに現代ではマナー、カントリーのどちらにおいても一般公開による観光地化が進み、より気軽に当時の雰囲気を楽しめる場所となりました。個人的にはマナーを冠したハウスの方が、単にカントリーハウスというより、立派で豪華なイメージがあります。

カントリーハウスはマナーも含む、田舎に建つ壮大な宮殿から小さな屋敷まで、すべての総称なので、その規模はさまざまです。建てられた時代によって建築様式も異なり、中世のものからチューダー朝、エリザベス女王時代の様式、あるいはそののちのゴシック様式やバロック様式、摂政時代に新築されたパラディオ様式、そこから少し時代を下ったヴィクトリアン様式などがあります。

カントリーハウスの種類:マンションとは

カントリーハウスの種類:マンションとは
ホテルの正面玄関  ©Hand Picked Hotels

ナットフィールド・プライオリ・ホテルは、ロンドンにあるウエストミンスター宮殿の、優美なネオ・ゴシック調に影響を受けています。1872年頃の雰囲気を堪能できるこの建物はヴィクトリアン様式で、カントリーはカントリーでも、今度はさらにまた別の呼び名“マンションハウス”だといいます。

マンションは古典フランス語、元を正せばラテン語を語源とした言葉でやはりマナーと同じような意味ですが、要塞機能をもたず、はじめから居住用に建てられた邸宅、つまりはこれまたカントリーハウスのこととなります。なお、日本語で集合住宅を指すマンションとはその規模や形態、格からいって別物となります。

名作ドラマの世界を疑似体験

名作ドラマの世界を疑似体験
高貴な紫色でコーディネートされた、すてきな調度品 ©Hand Picked Hotels

ナットフィールド・プライオリ・ホテルの受付を通り過ぎると、これがカントリーハウスの特徴のひとつ、かつて多くの客人をもてなした大広間でしょうか。いまはホテルのロビーとして、ソファや椅子でドリンクを頼むこともできます。実際、なぜだか年配男性のふたり組ばかり、平日の昼間からビアグラスなどを傾け、優雅なときを過ごしているようでした。

アフタヌーンティーはホテル名にあるとおり、修道院(priory)でよく見られるアーチ型の天井や柱、壁などが当時のまま残されているレストランで供されます。ウェブサイトには図書室のライブラリーも利用可とありましたが、今回はレストランに案内されました。

豪華なライブラリー ©Hand Picked Hotels
豪華なライブラリー ©Hand Picked Hotels

平日で人が少ないなか、スーツを着てひとりで3段トレイのアフタヌーンティーに向き合う男性もおり、その非日常感がまるで映画のワンシーンのようでした。

同ホテルでは、クリスマスやバレンタイン、母の日にイースターなど、季節ごとのイベントに合わせて期間限定のアフタヌーンティーが楽しめますが、この日のケーキスタンドにのった皿は、近年はやりのスレートタイプ。自家製定番サンドイッチに温められたスコーン、ミニケーキなどのスイーツに、甘くないペストリーで構成されていました。

下段「スモークサーモンとビーツのラップサンド」が特に美味
下段「スモークサーモンとビーツのラップサンド」が特に美味

店内はとても静かで落ち着いたひとときを過ごせます。ときおり執事風の格好をした従業員が、シルバーの丸い蓋がかぶさった食器をワゴンで運んでいきます。

通路を歩けば、向こうからやってきたウエイターがわざわざ立ち止まってうやうやしく道を空けてくれ、給仕を担当してくれたウエイトレスは、席につくなりまずは筆者のハンドバッグを褒め、そのあともお茶のお代わりを3度も尋ねに来てくれます。身分は違えど、カントリーハウスを舞台にしたイギリスの人気ドラマ、『ダウントン・アビー』の世界へと思いを馳せてしまいました。

アフタヌーンティーの作法

アフタヌーンティーの作法
知っておくと、より楽しめるアフタヌーンティーの作法

アフタヌーンティーはもともと日本でも人気が高く、これまでも幅広い層に親しまれてきましたが、ここ数年のコロナ禍で気軽に旅行ができなくなった昨今では、手軽に非日常感を体験できるとして、「ヌン活」という名称で再び人気高騰中だとか。

おしゃべりしながら(日本のコロナ禍では“黙食”だったかと思いますが)、リラックスしてその場を楽しむことが大前提ですが、アフタヌーンティーをいただく際にはちょっとしたイギリス式のマナーを知っておくと安心です。以下はいずれも、現地ウェブサイトの情報を元にした基本的な作法で、ホテルやレストランの格によって異なりますが、一例として今後の参考にしていただければ幸いです。

ドレス・コード:男性は襟つきのシャツなど小ぎれいな装いの“スマート・カジュアル”が基本です。ジャケットやネクタイをする必要はなく、きれいめのジーンズでもかまいませんが長ズボン、「すり減っていない」清潔な靴は必須(厳しめ!?)です。女性は場合によってはドレスアップをしてもよいくらいですが、都心の有名ブランドホテルやレストランなどでなければ、普通のよそ行きの格好でよいのではないでしょうか。

下段から食べる:見た目のバランス上、店によって違う場合もありそうですが、基本的には3段トレイのうち、下にサンドイッチといった甘くない食べ物があるので、下段から手をつけます。

目移りしてしまう品数がアフタヌーンティーの醍醐味
目移りしてしまう品数がアフタヌーンティーの醍醐味

スコーンの食べ方:最近はそこまで厳密ではありませんが、正統なスコーンの食べ方としては、手で半分に割ってから、それぞれの断片にジャムやクリームなどを適量塗ります。筆者がいつもティールーム(喫茶店)や普段家で食べるように、真ん中をナイフで半分に切って、さらにはサンドイッチのように挟むなんてことは言語道断、あり得ないこと!? なんだそうです。

紅茶の飲み方:今回、久しぶりにいただく茶葉から淹れた紅茶があまりにもすばらしく、イギリス人からしたらこれまたあり得ない、ミルクは結局入れないままで終えてしまったので関係ありませんでしたが、紅茶をスプーンで混ぜるときは、グルグルと弧を描くのではなく、奥から手前へ縦にスプーンを動かすべきだそうです。

かき混ぜる動作は戦争行為を思い起こさせ、アフタヌーンティー作法への冒涜につながりかねないそうなので、ぜひとも気をつけたいところです。

とはいえ、基本は「ちょっとおしゃれをして食事やお茶、場を楽しむ」ことがいちばんです。Hand Picked Hotelsは、今回ご紹介したナットフィールド・プライオリ・ホテルを含めイギリス国内に21ヵ所でホテル展開をしています。行き先に合わせてぜひ、それぞれのアフタヌーンティー(すべてのホテルで行われているわけではありません)やレストランをお楽しみください。

■ナットフィールド・プライオリ・ホテル(Nutfield Priory Hotel & Spa)
・住所: Nutfield Road, Nutfield, Redhill, Surrey, RH1 4EL
・最寄り駅: 電車Redhill駅
・アフタヌーンティー・サービス時間: 12:00〜16:30
・料金: 大人£29.5、子供£12.45
・URL: https://www.handpickedhotels.co.uk/nutfieldpriory/dining/our-services/traditional-afternoon-tea

旅のバイブル「地球の歩き方」ガイドブック

旅のバイブル「地球の歩き方」ガイドブック
『地球の歩き方 ガイドブック A02 イギリス 2019年~2020年版』

巻頭ページでは各地方の魅力をビジュアルで紹介し、体験してほしいテーマは厳選して詳しく解説。さらに世界遺産リストやイベントカレンダーも掲載しています。大観光都市ロンドンや、美しい自然が心を癒してくれるカントリーサイドを訪れる皆さんの「自分流の旅づくり」をとことん応援する一冊です。

■地球の歩き方 ガイドブック A02 イギリス 2019年~2020年版
URL: https://hon.gakken.jp/book/2080126700

※当記事は、2022年5月20日現在のものです。

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年5月20日現在、国によってはいまだ観光目的の渡航が難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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