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『PLAN 75』早川千絵監督に聞くフランス滞在と映画作り、カンヌでスペシャルメンションの話題作

2022年06月15日

主演の倍賞千恵子さん

深刻化する日本の高齢化問題をフィクションで描いた早川千絵監督の『PLAN 75』が、2022年6月17日より新宿ピカデリー他で全国公開されます。今年5月に開かれた第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、新人監督賞の審査員より特別表彰を受けた話題作です。カンヌ、そしてフランスについて、どんな感想を持ったのか映画祭開催中に現地カンヌで聞きました。

作品の仕上げで滞在したパリでの思い出

磯村勇斗さん(左)、早川千絵監督(中央)、ステファニー・アリアンさん(右)

『PLAN 75』は少子高齢化がより深刻化した近未来の日本が舞台。満75歳から生死の選択権を与える<プラン75>という制度が国会で可決・施行されたという架空の世界を描きます。主演は倍賞千恵子さん。夫と死別してひとり慎ましく暮らす78歳の角谷ミチを演じます。

市役所の<プラン75>の申請窓口に勤務する岡部ヒロム役に磯村勇斗さん、死を選んだお年寄りに最期の日が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの成宮瑶子役に河合優実さん、フィリピンから単身来日した介護職のマリア役にステファニー・アリアンさんなどを配し、脇を固めています。

『PLAN 75』は早川監督にとって初めての長編作品。また、カンヌ国際映画祭での作品上映は、2014年に学生映画部門であるシネフォンダシオン部門に短編『ナイアガラ』を出品して以来、2度目8年ぶりです。

カンヌ公式上映の舞台で挨拶をする早川監督

──この度はお時間をありがとうございました。早川監督は2014年にもカンヌを訪れていますが、プライベートも含めると今回で何回目ですか?

旅行で2回訪れたことがあります。『PLAN 75』では撮影した後の仕上げの作業を、今年2月から4月にかけてパリに2カ月間滞在しながら行っていました。そして今回5月、カンヌ国際映画祭に出るため再びフランスへ戻ってきました。

──監督は以前ニューヨークに住んだことがあると聞きました。アメリカとフランスはやはり違いますか?

ニューヨークに10年いました。アメリカにいる時は、アメリカ人とヨーロッパ人の違いがよく分からなかったんです。今回フランスに来て、フランス人はアメリカ人と違うんだとすごく感じています。アメリカでは、自分が負けちゃいけないという主張やパワーをすごく感じていました。しかし、パリはアメリカと比べてもっとリラックスしているように思えて、パリを好きだなと思いました。

──そうですか!私はフランスに住んでいて、この社会で主張するので、すでにいっぱいいっぱいだと感じているので、アメリカで暮らすのはさらに大変そうです(笑)。パリ滞在中に気に入った場所などありましたか?

スタジオがあったのがパリ市内20区のガンベッタ、アパートが11区のヴォルテールでした。いわゆる観光地ではなく普通に人々が生活しているところで、そこを毎日歩いて往復していました。町並みが好きでした。

地下鉄ヴォルテール駅近辺の町並み

──パリ市内北東部でペール・ラシェーズ墓地があるところですよね。ショパンとかバルザック、フランスの映画監督だとクロード・シャブロルのお墓とか。

パン屋さんとお花屋さんが多かったのに驚きました。レストランも多かったです。あれだけの数のレストランがあるのに、どこも賑わっているということにびっくりしましたね。

日仏の異文化間でも作品の本質を共有できた

──『PLAN 75』は監督にとって初の長編映画であり、しかも海外で編集などを行いました。作業は順調に進みましたか?

予想以上に上手くいきました。すごく良い人たちと出会えたので、人との相性もあったと思います。また、映画を作る上で言葉は全く問題になりませんでした。描かれている感情とか、どういうストーリーでどういうキャラクターが描かれているか、理解ができず誤解があるとか、そういうことも一切ありませんでした。『PLAN 75』は人間の尊厳についての映画であり、人生の美しさについての映画であるということについて、ずっと理解し合いながら作業できことは、本当に大きな励みになりました。

──文化の違いによる食い違いもありませんでしたか?

良い思い出しかなくて。初めての長編制作で、どうやって編集の人と仕事をするとか、どうやって音楽を作る人と話し合いをすればいいとか、分からないまま飛び込んでしまったのですが、それらプロセスがすごく上手く運んだのは、コミュニケーションがとてもダイレクトだったからだと思います。

──というと?

フランス人のスタッフとはお互いネイティブではない英語で喋っていたので、曖昧な表現が多い日本語と違って、思ったことを直接的に伝えられた気がします。すごく順調にいったのは、そこにも理由があったかもしれません。

──フランスの映画業界での働き方については、どう感じました?

時間に余裕がありました。パリでは10時くらいに出勤して、18時、19時でぴたりと仕事をやめる。お昼の時間もちゃんと取れますし、夜も早い時間で終わってしっかり休むことができます。オンとオフを切り替えられるので、クリエイティブに本当に良い影響がありました。理想的な環境でしたね。

──日本と環境は違いますか? 

日本で長編を作ったことがないので、比べることはできないんですが、労働環境とかフランスの良いとこを学んで、日本の映画業界を良くできたらいいなと思っています。両方の良いところを学べたらと思います。

──今回の映画作りの経験は次の作品に反映されそうですか?

ものすごく生かされると思います。素晴らしい仲間と出会いましたし、1本長編を作ったこと全て学びでした。経験値が少し上がりましたし、次はもっとこうできるとか、同じパートナーと組んでまた一緒に映画を作りたいという気持ちが強くなりました。

海外で通じ合えた時の喜びはとても大きい

公式上映後、拍手に包まれる早川監督

──今回フランスで作品を披露してみて、観客はどんな反応でしたか?

映画を観た後に自分の親を思い出したとか、おばあちゃんを思い出したとか、終わった後に電話をかけたとかいう人が多かったです。日本では、自分ごととして自分の将来を見ている人が多い印象でした。みんな日本の社会に生きていて歳をとることに不安が大きいというか、そのことがこの映画をよりリアルに感じさせるようでした。「もしこの制度があったら私は使っているかも」と感想を伝えてくれた人も多かったです。

──フランスでは日本のような反応はなかった?

「自分も<プラン75>を使っているかも」と感想を述べた人は確かいなかったです。フランスのメディアから取材を受けた時に、「もしフランスでこういう制度が始まったらものすごいデモが起きるけど、日本人がそれをすんなり受け入れることがすごく不思議だ」と言われました。この点は、日本人の特性として作品内で描きたかったポイントでもあるので、やはりフランス人から見ると奇異に映るのかなと思いました。

──フランスは日本と比べてお年寄りが元気な気がします。最後の最後まで人生を楽しんでいるというか。

パリで気づいたのは、町にいるお年寄りがすごく多いなと感じました。杖をつきながら、夜中の映画館に行くとか。

──『PLAN 75』は高齢化がテーマの作品でしたが、今後撮りたい分野は何ですか?

今回は社会的なテーマを扱う映画だったので、反動ですごくパーソナルな話を作ってみたいなと思っています。特に子供を主人公にして、子供から見た家族だったり世界だったり社会を描いてみたいなと思っています。

──最後に今後、海外でチャレンジしたいと思っている人へアドバイスをください。

絶対に(海外に)出たほうがいいです。人種もカルチャーも全く違う中で、人と出会って関係を築くというは、違うことが前提でそこで通じ合えた時の喜びはものすごく大きいものだと思います。その嬉しさは外に出ないと体験できないので、本当に声を大にして外の世界を見ることは良いことだよと伝えたいです。

■PLAN 75
・公開: 2022年6月17日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
・脚本・監督: 早川千絵
・配給: ハピネットファントム・スタジオ
・URL: https://happinet-phantom.com/plan75/
・出演: 倍賞千恵子
磯村勇斗 たかお鷹 河合優実 ステファニー・アリアン 大方斐紗子 串田和美
© 2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

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※当記事は、2022年6月9日現在のものです

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年6月9日現在、国によってはいまだ観光目的の渡航が難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
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◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
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