新世代ミュージアム「ラトリエ・デ・リュミエール」でゴッホを観よう(フランス・パリ)

公開日 : 2019年02月02日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき
『ファン・ゴッホ、星月夜』のシミュレーション ©Culturespaces / Gianfranco Iannuzzi
『ファン・ゴッホ、星月夜』のシミュレーション ©Culturespaces / Gianfranco Iannuzzi

2018年4月、パリにオープンした新世代ミュージアム「ラトリエ・デ・リュミエール」。第1作となったクリムトの作品群は大好評で、会期を延長して2019年1月頭まで上映されました。気になる次作『Van Gogh, La nuit étoilée(ファン・ゴッホ、星月夜)』は、2019年2月22日(金)からの公開です。同時上映となる『Japon rêvé, images du monde flottant(夢に見た日本、浮世絵)』、『Verse(ヴァース)』と合わせて紹介します。

デジタルアートセンター

デジタルアートセンター
Simulation - Atelier des Lumières ©Culturespaces / Plasticine

「ラトリエ・デ・リュミエール(L’atelier des lumières)」は、デジタル技術を駆使したアートセンターです。光と映像、音を使い、アートの描く世界に観客がどっぷり浸かる経験を可能にします。19世紀に建てられたパリ11区の旧鋳造所が改装され、美術作品への新たなアプローチを可能とする新世代ミュージアムが誕生しました。

運営を手掛けるキュルチュールエスパス(Culturespaces)は、2018年にも同様のデジタルアートセンターを韓国済州島にオープン。また、2020年には、フランス・ボルドーにも潜水艦を使ったデジタルアートセンターの誕生が予定されています。

「ラトリエ・デ・リュミエール」には、1,500平方メートルのホールと、160平方メートルのステュディオがあります。前者では、アートの歴史や著名なアーティストを扱った長めの作品と、それに呼応する短い作品が交互に上映されます。後者では、現代アーティストによる短めの作品が上映されます。

ファン・ゴッホの光と影

ファン・ゴッホの光と影
Vincent Van Gogh, La nuit étoilée, 1888, Musée d’Orsay, Paris ©Bridgeman Images

今回、ホールで上映される主作品のタイトルは、『Van Gogh, La nuit étoilée(ファン・ゴッホ、星月夜)』。

1890年、37歳で人生にピリオドを打つまでに、ゴッホは約2,000におよぶ作品を描きあげました。オランダ生まれのゴッホの作品は、若いころのものは、生まれた北の土地の気候を映し出すかのように、暗い雨の音が聞こえてくるような陰鬱な色が目立ちます。

その後、ゴッホはパリに移り、ゴーギャン、トゥールーズ=ロートレック、カミーユ・ピサロらと親交を得ます。この時期、印象派や日本の浮世絵と出合ったこともまた、ゴッホに多大な影響を与えました。

Vincent Van Gogh, Le semeur, 1888, Rijksmuseum Kroller-Muller, Otterlo ©Bridgeman Images
Vincent Van Gogh, Le semeur, 1888, Rijksmuseum Kroller-Muller, Otterlo ©Bridgeman Images

晩年、ゴッホが南仏アルルとその周辺で過ごした時間は、2年に満たないものですが、その間、おびただしいほどの作品を描いています。この時期に描かれた絵には、『ひまわり』や『カラスのいる麦畑』など、代表作として知られるものが多くあり、どれも画面からはみ出すほどの南仏の太陽の光を感じさせます。

Vincent Van Gogh, Champ de blés aux corbeaux, 1890, Musée Van Gogh, Amsterdam ©Bridgeman Images
Vincent Van Gogh, Champ de blés aux corbeaux, 1890, Musée Van Gogh, Amsterdam ©Bridgeman Images

『Van Gogh, La nuit étoilée(ファン・ゴッホ、星月夜)』は、ゴッホの作品から約500を選び、その絵の変遷と、筆の動きや溢れんばかりの色の洪水を、全身で体感できるものとなっています。

ゴッホの夢見た日本

ゴッホの夢見た日本
『夢に見た日本、浮世絵』シミュレーション ©Culturespaces _ Danny Rose

ショートプログラムである『Japon rêvé, images du monde flottant(夢に見た日本、浮世絵)』は、そのタイトルの通り、19世紀後半、ヨーロッパが「発見」した日本のイメージをかたちにしたものです。

ゴッホ自身も、パリではジャポニスムに興味を持ち、浮世絵を買って研究しました。その影響は、その後の彼の作品の構成や色遣いにみることができます。自身でも、パリのあと移り住んだ南仏から弟テオにあてた手紙に、「南の光の中では、すべてが日本のように見えるよ」と書いているくらいです。

現代作品『Verse(ヴァース)』

現代作品『Verse(ヴァース)』
『ヴァース』©Culturespaces / Thomas Vanz

ステュディオで上映されるのは、トーマ・ヴァンス(Thomas Vanz)による『Verse(ヴァース)』です。テーマは恒星の誕生と死、そして再生。宇宙と無限大の美を扱った作品です。トーマ・ヴァンスは、2016年に最初のショートフィルムを発表して以来、すでに複数の賞を受けている若手映像製作者です。宇宙や形而上的問題を、化学反応など実際の映像を用いて表現します。

『ヴァース』©Culturespaces / Thomas Vanz
『ヴァース』©Culturespaces / Thomas Vanz

『ファン・ゴッホ、星月夜』は、2019年2月22日(金)から12月31日(火)までの上映予定です。今年いっぱい楽しめますので、パリへお越しの方は、ぜひ足を運んでみてください。

いかがでしたか。新世代ミュージアム「ラトリエ・デ・リュミエール」で開催される『Van Gogh, La nuit étoilée(ファン・ゴッホ、星月夜)』を紹介しました。今度のフランス・パリ旅行の参考にしてみてください。

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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