クリムトの官能の世界にどっぷり浸かる新時代ミュージアムがパリに誕生!
19世紀末のウィーンを代表する画家グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)。金箔を多用し豪華絢爛でありながら、どことなく退廃的で官能的な雰囲気をまとう作品で知られます。その独特な世界は、いまだに多くの人を惹きつけて止みません。そんなクリムト作品を間近に感じられるデジタルアートセンター、ラトリエ・デ・リュミエール(L’atelier des lumières)を紹介します。
パリ初のデジタルミュージアム「光のアトリエ」
筆者もクリムトの林の絵を初めて見た時は、この中に分け入って散策してみたいという思いに囚われたものです。その願いを可能とするデジタルアートセンター、ラトリエ・デ・リュミエール(L’atelier des lumières、意味:光のアトリエ)が、もうすぐ2018年4月13日(金)、パリに誕生します。
場所は、パリの11区です。著名人の墓が多いことで知られるペール・ラシェーズ墓地から歩いて10分ほどの距離にある、サン・モール通り38番地です。19世紀に建てられた旧鋳造所が、ラトリエ・デ・リュミエールに生まれ変わります。当然、旧鋳造所のため天井も高く、広いスペースが望める場所です。コンセプト作りから、改築、運営のすべてを手掛けるのは、フランスの美術館やモニュメント約10ヵ所を運営する私立団体キュルチュールエスパス(Culturespaces)です。
1835年に建てられた旧鋳造所を改築
ラトリエ・デ・リュミエールの総面積は、2,000平方メートルです。壁の高さは10メートルもあり、壁などスクリーンとして用いられる場所の面積は、実に3,300平方メートルにもおよびます。この大きなキャンバスに、140のレーザープロジェクターを使って、サウンド入りのアート映像が流されるのです。
ラトリエ・デ・リュミエールには、1,500平方メートルの大きなホールと、160平方メートルのステュディオのふたつの上映場所が設けられます。
ホールでは、アートの歴史や、著名なアーティストを扱った長めのデジタル作品と、より現代にフォーカスを置いた短い作品が交互に上映される予定です。他方、ステュディオでは、現代のデジタルアーティストが、それぞれの視点から自由に創作した短めの作品を上映します。
クリムトの世界にどっぷり浸かる30分
2018年4月13日(金)、ラトリエ・デ・リュミエールのオープニングを飾るのは、まず、グスタフ・クリムトとその後輩であるエゴン・シーレ(Egon Schiele)の世界を30分堪能できるプログラムです。
オープニングプログラムの制作者らは、「アート作品をデジタル化することで、ウィーンの分離派会館に一度も足を運んだことがない人でも、著名なクリムトのフレスコ画と向き合う機会を得ることができる」と語っています。確かに、写真を見ただけでも酔いしれそうなほど、クリムトの世界がひしひしと漂ってきます。
一方、ショートプログラムが取り上げるのは、分離派の後継者であるウィーンのアーティスト、フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー(Friedensreich Hundertwasser)です。フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーの作品は、溢れるような色の使い方が特徴的です。
このふたつのプログラムを見ることで、時代を超えたアートの繋がりを観客に感じさせる狙いがあると思われます。ホールで見られるこのふたつのプログラムは、2018年4月13日(金)から11月11日(日)まで上映される予定です。
ステュディオでは、イスタンブルとロサンジェルス、ロンドンに基点を持つスタジオOuchhhの作品 『POETIC_AI』が、4月13日(金)から8月31日(金)まで上映されます。
未来のアート鑑賞法を見据えたオープン
既成の美術作品を、なぜデジタルの形で公開するのか?その疑問には、キュルチュールエスパス代表のブリューノ・モニエ氏の次の言葉が答えになるでしょう。
「現代においては、カルチャーとの接し方は、昨日までのものとは変化している。(中略)受け身で鑑賞するだけはなく、これからはどんどん、アートを、まるでその中に浸るようにして感じるようになるはずでしょう。そうして、それによって湧き上がる感情をも味わうのです。私は、アートとデジタルのコラボは未来において必須のことだと考えています。それにより、これまでの美術館よりもより広い層、若い世代に働きかけることができるからです」
パリ初の、新世代デジタルミュージアム、ラトリエ・デ・リュミエール。話題になること間違いなしの新スポットがパリに誕生です。
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
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