ディズニーが贈る珠玉のファンタジー映画『くるみ割り人形と秘密の王国』の舞台の歩き方

公開日 : 2018年11月30日
最終更新 :

1816年にE.T.A.ホフマンが書いた童話『くるみ割り人形とねずみの王様』は、児童文学や絵本として親しまれる一方で、この物語をベースにチャイコフスキーが音楽を手掛けたバレエ「くるみ割り人形」としても120年以上にわたって世界中の人々に愛され続けています。この不朽の名作をディズニーが実写映画化し、誰も出会ったことのないファンタジーとして新たな命を吹き込みました。今回は、リアルに描き出された「秘密の王国」という物語の舞台にスポットを当て、コンセプトアートを使って、歩き方流の解説を加えました。鑑賞前、鑑賞後のいずれに観ても、作品をもっと好きになることでしょう。

「手で触れられそうなリアリティ」へのこだわりに満ちた舞台演出

「手で触れられそうなリアリティ」へのこだわりに満ちた舞台演出

主人公のクララが迷い込んだ「秘密の王国」は、花の国、雪の国、お菓子の国、そして第4の国から構成されていますが、それらのほとんどがCGではなく数々のセットが組まれました。 それぞれ異なるテーマを持ったファンタジックな国々ですが、花の国、雪の国、そして中心に位置する煌びやかな宮殿には、明らかなモデルがあります。それゆえ、本物の社会としての現実味も有しているのです。本当に手で触れられるかのようなリアルさを実現させたのは、プロダクション・デザイナーのガイ・ヘンドリックス・ディアスですが、「5歳の頃の自分が観ても本物だと信じられるような世界を作りたかった」と語っています。

この映画の中心におかれる宮殿はロシアの歴史的建築が反映されている
この映画の中心におかれる宮殿はロシアの歴史的建築が反映されている

宮殿と4つの国々を見てみましょう。
まずは、マジカルな4つの国々の中心に位置する宮殿。玉ねぎ型の屋根を持った複数の塔は鮮やかな色彩で彩られており、秘密の王国を象徴する建物です。ここにはロシアの歴史的建造物がデザインに引用されていますが、単なるビジュアルとしてのインパクトだけではなく、 チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」物語をロシアという共通の世界観で包み込む上で役に立っています。

ロシア、サンクトペテルブルクにある「血の上の救世主教会」 @istock
ロシア、サンクトペテルブルクにある「血の上の救世主教会」 @istock

秘密の王国の中で最もシンボリックな宮殿は、水の都サンクトペテルブルクにある「血の上の救世主教会」に酷似しています。教会の名前は、1881年に皇帝アレクサンドル2世が暗殺された場所に立っていることに由来。

生きた本物の花々で装飾された「花の国」
生きた本物の花々で装飾された「花の国」

ひとつ目の国は「花の国」。ここは、農民や養蜂者たちが暮らし、 花と農作物に囲まれた世界です。前出のディアスはオランダの風車と南イングランドの村を参考に、花々に囲まれたい美しい国のセットをデザインしています。このセットは生きた本物の花々で装飾され、大気は花の香りで満たされていたようです。

ウイリアム・モリスが「イングランドで最も美しい村」と評した村バイブリー @istock
ウイリアム・モリスが「イングランドで最も美しい村」と評した村バイブリー @istock
オランダの風車といえばここ、世界遺産のキンデルダイク @istock
オランダの風車といえばここ、世界遺産のキンデルダイク @istock
見知った景観も質感が異なることで新しい世界に変わった「雪の国」
見知った景観も質感が異なることで新しい世界に変わった「雪の国」

ふたつ目の国は「雪の国」です。政治家、氷製造者そして鉱夫たちの国です。ドイツの16世紀の村々を景観として生かし、それらを構成する建築物はスウェーデンの有名なアイスホテルのように幾層もの氷で形作られています。

おとぎの国そのままのローテンブルクの村。マルクス塔の周辺 @istock
おとぎの国そのままのローテンブルクの村。マルクス塔の周辺 @istock
氷の輝きが幻想的なスウェーデンのアイスホテル @istock
氷の輝きが幻想的なスウェーデンのアイスホテル @istock
本物のキャンディーを使って立てられた「お菓子の国」
本物のキャンディーを使って立てられた「お菓子の国」

キーラ・ナイトレイ演じるシュガー・プラムというキャラクターからインスピレーションを受けて作られたこの国のセットは、ボードゲームの「キャンディランド」の世界観からイメージされています。本物のお菓子を使って立てられた建物は、チョコレートの瓦屋根やヌガーで作られた壁、飴で作ったステンドガラスなど、遊び心と創意に満ちています。

ダークでミステリアスな第4の国
ダークでミステリアスな第4の国

第4の国は、ヘレン・ミレンが演じるマザー・ジンジャーが統治する国。かつては「遊園地の国」と呼ばれ、この世界の遊園地とサーカスの中心地だったという。その変貌の理由に、クララの冒険の謎を解く鍵が隠されています。

クララが迷い込んだ秘密の王国は宮殿とそれを取り囲む4つの国で構成されている
クララが迷い込んだ秘密の王国は宮殿とそれを取り囲む4つの国で構成されている

STORY

STORY
運命の糸に導かれ、壮大な別世界を旅するクララ役には、『インターステラー』で主人公の娘役を演じたマッケンジー・フォイ

1897年、ロンドン。主人公はシュタールバウム家の次女クララ。ビクトリア朝の「女性は女性らしく」という風潮の中で、科学や機械いじりが大好きなクララは、一番の理解者であった母親のマリーを失って心を閉ざしていた。
その年のクリスマス・イブ、亡き母が彼女に遺したクリスマスプレゼントは、鍵のかかった卵形の入れ物であり、「あなたに必要なものはすべてこの中にある」というカードが添えられていた。
母が遺した言葉の意味を知るために、クララは鍵を探し始める。その晩開かれた名付け親であるドロッセルマイヤーのクリスマス・パーティーで、彼からのプレゼントを受け取る糸をたどるゲームに参加したクララは、いつの間にか不思議な世界へ足を踏み入れていた。

鍵を追ってクララが迷い込んだのは、息を飲むほど美しく幻想的な世界。それは、色とりどりの花と緑で覆われた“花の国”、キャンディやマシュマロでできた“お菓子の国”、雪と氷がクリスタルのように輝く“雪の国”、そして謎の多い“第4の国”からなる誰も知らない<秘密の王国>。プリンセスと呼ばれ戸惑うクララだったが、やがて、この世界を創り上げたのが亡き母であることを知る。だが、マザー・ジンジャーが支配する“第4の国”が反乱を起こし、王国は消滅の危機に瀕していた。
母が愛した王国を救うことを決意し、くるみ割り人形のフィリップとともに、“第4の国”へと旅立つクララ。それは、この美しい世界に隠された<真実(メッセージ)>を探す、驚くべき冒険の始まりだった…。

豪華な装飾、華やかな衣装、そしてチャイコフスキーの不朽の名曲が物語を彩る
豪華な装飾、華やかな衣装、そしてチャイコフスキーの不朽の名曲が物語を彩る
クララは統治者たちと出会い、秘密の王国を作り上げたのが亡き母であることを知る
クララは統治者たちと出会い、秘密の王国を作り上げたのが亡き母であることを知る
秘密の王国の脅威第4の国を統治するマザー・ジンジャー
秘密の王国の脅威第4の国を統治するマザー・ジンジャー
1892年、バレエ『くるみ割り人形』の初演が行なわれたサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場  @istock
1892年、バレエ『くるみ割り人形』の初演が行なわれたサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場  @istock

■タイトル: 『くるみ割り人形と秘密の王国』
■公開日: 2018年11月30日(金) 全国公開
■原題: The Nutcracker and the Four Realms
■監督: ラッセ・ハルストレム ジョー・ジョンストン
■映画ストーリー&脚本: アシュリー・パウエル
■製作: マーク・ゴードン, p.g.a. ラリー・フランコ, p.g.a.
■衣裳: ジェニー・ビーヴァン
■指揮: グスターボ・ドゥダメル
■音楽: ジェームズ・ニュートン・ハワード
■配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン

■キャスト
シュガー・プラム: キーラ・ナイトレイ
クララ: マッケンジー・フォイ
ホーソーン: エウヘニオ・デルベス
シヴァー: リチャード・E・グラント
バレリーナ・プリンセス: ミスティ・コープランド
マザー・ジンジャー: ヘレン・ミレン
ドロッセルマイヤー: モーガン・フリーマン

■コピーライト: © 2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
■公式サイト: https://www.disney.co.jp/movie/kurumiwari.html

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

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