ロシア帝国を築いた偉人か夫殺しの悪女か!?「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」
啓蒙専制君主として18世紀後半のロシア帝国の黄金時代を築き上げた女帝エカチェリーナ2世。歴代の皇帝のなかで最長在位を誇り、領土の拡大やロシア文化の発展にも貢献し「大帝」と尊称される一方で、夫のピョートル3世の殺害や多くの寵臣(愛人)がいたことで孫のニコライ1世から「玉座の上の娼婦」とも酷評されています。そんなエカチェリーナ2世の愛と欲望の生涯を、歴史的史実をベースに、架空の物語などを盛り込み史実とフィクションが絶妙にマッチングしたストーリーで描くドラマ「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」が、2月15日(月)22:00より、 海外ドラマ専門 チャンネル『スーパー!ドラマTV』で独占日本初放送を開始。今回は、放送をより楽しむためのキーワードを歩き方的視点でご紹介します。
◎生粋のドイツ人でありながらロシアの大帝となる
ロシア人以上にロシア人であろうと努めたエカチェリーナ2世。プロイセン王フリードリヒ2世の信奉者である夫のピョートル3世は、プロイセン贔屓でロシアへの敬意を払わなかったが、エカチェリーナ2世は、ロシア語、ロシアの歴史,文化を真摯に学び、エリザヴェータ女帝をはじめ宮廷の人々やロシアの人々に気に入られようと努力した。また、皇帝に即位したのちも、ヨーロッパの文化を積極的に導入し、ロシアの近代化を進めるべく啓蒙専制君主として強力に統治した。
◎エカチェリーナ、3つの誓い
エカチェリーナ2世は、自分がロシアにしっかりと腰を据えたと実感したときに3つのことを決意する。「第1に、大公(ピョートル)に好かれること。第2に、女帝(エリザヴェータ)に好かれること。そして、第3に、国民に好かれること」。(これら3つの誓いは本作のなかでも描かれているが)エカチェリーナは、この実現のためには、どんなことも厭わなかった、と自身の回想録で述べており、「第1に関しては1761年の段階で成功の望みを失った。第2は幾たびかうまくいった。第3は、完全な意味での成功を収め、自分の意図したことは達成できた」と自己評価している。
◎ピョートルはロシアの民に肉体を、エカチェリーナは魂を与えた
これは18世紀のロシアの詩人ミハエル・ヘラースコフの言葉。ピョートルとは、18世紀初頭にロシア帝国の礎を築いたピョートル1世(在位:1682年~1725年)のこと。建国したのはピョートル1世であるが、フランス啓蒙思想を導入し、積極的に西欧文化を取り入れて近代化を推し進め、ロシアを列強と並ぶ地位に押し上げたのはエカチェリーナ2世(在位:1762~96年)である。
◎エカチェリーナの華麗なる遺産、エルミタージュ美術館
1764年、エカチェリーナ2世がベルリンからゴツコフスキーのコレクション317点を購入したのがエルミタージュ・コレクションの始まりである。美術品はエルミタージュ (隠れ家) と呼ばれる王宮別館に収蔵されたが、当時はエカチェリーナの私的な展示室だった。一般公開されるようになったのは1863年以降である。歴代の皇帝によって美術品の収集は継続して行われ、現在では300万点を超える作品が所蔵される世界最大規模の美術館となっている。
■ エルミタージュ美術館
・URL: https://www.hermitagemuseum.org
エカチェリーナ宮殿の名前は、エカチェリーナ2世ではなく、ピョートル大帝の后であり、第2代ロシア皇帝のエカチェリーナ1世に由来する。この宮殿は、嵐によってアムチトカ島に漂着した大黒屋光太夫が日本への帰国を願い出て、エカチェリーナ2世に謁見した場所でもある。夏季をこの宮殿で過ごしたことから「夏宮殿」と呼ばれるが、エカチェリーナ2世も愛したという「琥珀の間」が有名である。壁を飾っていた琥珀は、第二次世界大戦のレニングラード包囲戦中にドイツ軍に持ち去られたが、2003年に復元され当時の輝きを取り戻した。
◎エカチェリーナとワクチン
1768年エカチェリーナ2世は、当時のヨーロッパで蔓延していた天然痘の予防接種をロシアで最初に受け、国内そしてヨーロッパに予防接種を広めることに貢献したことでも知られている。英国の医学者エドワード・ジェンナーが安全性の高い牛痘接種法(牛痘法)を開発する30年も前のことで、天然痘患者の膿疱から抽出した液を接種する人痘接種法(人痘法)で行われた。この予防法は、重症化して死亡するリスクもはらんでいた。ちなみに、ジェンナーは、牛痘にかかった乳搾りの女性は天然痘に罹患しないか、かかっても軽症ですむという事実に着目し天然痘ワクチンを開発した。1798年に天然痘ワクチンの有効性を実証されてからは、牛痘法が主流となった。
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■ ストーリー
理想を夢見るロマンチックな少女エカチェリーナは、気まぐれな皇帝ピョートルとお見合い結婚するためロシアへやってくる。愛にあふれた輝かしい生活を思い描いていたエカチェリーナだったが、一歩足を踏み入れるとそこは危険で堕落に満ちた保守的な世界だった。やがてそんな世界を変えようと決心する彼女。そのために彼女が唯一しなければならないのは、夫を殺し、教会を打ちのめし、軍隊を黙らせ、宮廷を味方につけること。愛に生きる女性、教師、統治者、友人、ファイターなど一生を通してさまざまな顔を見せてきた女帝エカチェリーナを、時に史実を交えながら現代風に再現した“フィクション”ストーリー。
■ 作品データ
◎原題: THE GREAT/2020年/アメリカ/二カ国語&字幕/HD作品/全10話
◎企画・脚本・製作総指揮: トニー・マクナマラ
◎出演: エル・ファニング、ニコラス・ホルト、 フィービー・フォックス、アダム・ゴドリー、 グウィリム・リー
■「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」公式ページ
・URL: https://www.superdramatv.com/lineup/SNN000004741.html
筆者
地球の歩き方書籍編集部
1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。
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