ロシア帝国を築いた偉人か夫殺しの悪女か!?「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」

公開日 : 2021年02月16日
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夢見る少女から女帝エカチェリーナ2世へ。 Copyright © 2021 MRC II Distribution Company, L.P.
夢見る少女から女帝エカチェリーナ2世へ。 Copyright © 2021 MRC II Distribution Company, L.P.

啓蒙専制君主として18世紀後半のロシア帝国の黄金時代を築き上げた女帝エカチェリーナ2世。歴代の皇帝のなかで最長在位を誇り、領土の拡大やロシア文化の発展にも貢献し「大帝」と尊称される一方で、夫のピョートル3世の殺害や多くの寵臣(愛人)がいたことで孫のニコライ1世から「玉座の上の娼婦」とも酷評されています。そんなエカチェリーナ2世の愛と欲望の生涯を、歴史的史実をベースに、架空の物語などを盛り込み史実とフィクションが絶妙にマッチングしたストーリーで描くドラマ「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」が、2月15日(月)22:00より、 海外ドラマ専門 チャンネル『スーパー!ドラマTV』で独占日本初放送を開始。今回は、放送をより楽しむためのキーワードを歩き方的視点でご紹介します。

◎生粋のドイツ人でありながらロシアの大帝となる

◎生粋のドイツ人でありながらロシアの大帝となる
ドイツ人でありながら34年の長きにわたりロシアの最高位につき続けたエカチェリーナ2世。<br />Catherine_II_by_J.B.Lampi_,1780s/Kunsthistorisches Museum

ロシア人以上にロシア人であろうと努めたエカチェリーナ2世。プロイセン王フリードリヒ2世の信奉者である夫のピョートル3世は、プロイセン贔屓でロシアへの敬意を払わなかったが、エカチェリーナ2世は、ロシア語、ロシアの歴史,文化を真摯に学び、エリザヴェータ女帝をはじめ宮廷の人々やロシアの人々に気に入られようと努力した。また、皇帝に即位したのちも、ヨーロッパの文化を積極的に導入し、ロシアの近代化を進めるべく啓蒙専制君主として強力に統治した。

ロシア正教や近衛軍の支持を得てクーデターを敢行したエカチェリーナ2世は、<br />ロシアの近衛連隊の軍服を身にまとい馬上で指揮を取った。<br />Catherine_II_of_Russia_by_Vigilius_Eriksen,1762
ロシア正教や近衛軍の支持を得てクーデターを敢行したエカチェリーナ2世は、<br />ロシアの近衛連隊の軍服を身にまとい馬上で指揮を取った。<br />Catherine_II_of_Russia_by_Vigilius_Eriksen,1762
エカチェリーナ2世の戴冠式が行われたウスペンスキー大聖堂(生神女就寝大聖堂)。<br />イタリア人建築家アリストーテリ・フィオラヴァンティによって、<br />モスクワのクレムリンの中に建設されたロシア正教会の大聖堂。<br />©iStock
エカチェリーナ2世の戴冠式が行われたウスペンスキー大聖堂(生神女就寝大聖堂)。<br />イタリア人建築家アリストーテリ・フィオラヴァンティによって、<br />モスクワのクレムリンの中に建設されたロシア正教会の大聖堂。<br />©iStock
エカチェリーナが埋葬されたサンクト・ペテルブルクの首座使徒ペトル・パウェル大聖堂。<br />ペトロパヴロフスク要塞にあり、大聖堂内部にはピョートル大帝以来の皇帝と皇后のほとんどが埋葬されている。<br />©iStock
エカチェリーナが埋葬されたサンクト・ペテルブルクの首座使徒ペトル・パウェル大聖堂。<br />ペトロパヴロフスク要塞にあり、大聖堂内部にはピョートル大帝以来の皇帝と皇后のほとんどが埋葬されている。<br />©iStock

◎エカチェリーナ、3つの誓い

◎エカチェリーナ、3つの誓い
ピョートルに好かれるという第一の目標は最大の難関だった。<br />Copyright © 2021 MRC II Distribution Company, L.P.

エカチェリーナ2世は、自分がロシアにしっかりと腰を据えたと実感したときに3つのことを決意する。「第1に、大公(ピョートル)に好かれること。第2に、女帝(エリザヴェータ)に好かれること。そして、第3に、国民に好かれること」。(これら3つの誓いは本作のなかでも描かれているが)エカチェリーナは、この実現のためには、どんなことも厭わなかった、と自身の回想録で述べており、「第1に関しては1761年の段階で成功の望みを失った。第2は幾たびかうまくいった。第3は、完全な意味での成功を収め、自分の意図したことは達成できた」と自己評価している。

◎ピョートルはロシアの民に肉体を、エカチェリーナは魂を与えた

◎ピョートルはロシアの民に肉体を、エカチェリーナは魂を与えた
宮廷の陰謀や夫ピョートル3世の愚行に悩まされながらも、自分の信じた道を突き進む若きエカチェリーナ2世。<br />Copyright © 2021 MRC II Distribution Company, L.P.

これは18世紀のロシアの詩人ミハエル・ヘラースコフの言葉。ピョートルとは、18世紀初頭にロシア帝国の礎を築いたピョートル1世(在位:1682年~1725年)のこと。建国したのはピョートル1世であるが、フランス啓蒙思想を導入し、積極的に西欧文化を取り入れて近代化を推し進め、ロシアを列強と並ぶ地位に押し上げたのはエカチェリーナ2世(在位:1762~96年)である。

◎エカチェリーナの華麗なる遺産、エルミタージュ美術館

◎エカチェリーナの華麗なる遺産、エルミタージュ美術館
エルミタージュ美術館は、現在300万点以上の作品を所蔵する世界屈指のミュージアム。 ©iStock

1764年、エカチェリーナ2世がベルリンからゴツコフスキーのコレクション317点を購入したのがエルミタージュ・コレクションの始まりである。美術品はエルミタージュ (隠れ家) と呼ばれる王宮別館に収蔵されたが、当時はエカチェリーナの私的な展示室だった。一般公開されるようになったのは1863年以降である。歴代の皇帝によって美術品の収集は継続して行われ、現在では300万点を超える作品が所蔵される世界最大規模の美術館となっている。

■ エルミタージュ美術館
・URL: https://www.hermitagemuseum.org

サンクトペテルブルク郊外のツァールスコエ・セローにある ロココ建築のエカチェリーナ宮殿。 ©iStock
サンクトペテルブルク郊外のツァールスコエ・セローにある ロココ建築のエカチェリーナ宮殿。 ©iStock

エカチェリーナ宮殿の名前は、エカチェリーナ2世ではなく、ピョートル大帝の后であり、第2代ロシア皇帝のエカチェリーナ1世に由来する。この宮殿は、嵐によってアムチトカ島に漂着した大黒屋光太夫が日本への帰国を願い出て、エカチェリーナ2世に謁見した場所でもある。夏季をこの宮殿で過ごしたことから「夏宮殿」と呼ばれるが、エカチェリーナ2世も愛したという「琥珀の間」が有名である。壁を飾っていた琥珀は、第二次世界大戦のレニングラード包囲戦中にドイツ軍に持ち去られたが、2003年に復元され当時の輝きを取り戻した。

◎エカチェリーナとワクチン

◎エカチェリーナとワクチン

1768年エカチェリーナ2世は、当時のヨーロッパで蔓延していた天然痘の予防接種をロシアで最初に受け、国内そしてヨーロッパに予防接種を広めることに貢献したことでも知られている。英国の医学者エドワード・ジェンナーが安全性の高い牛痘接種法(牛痘法)を開発する30年も前のことで、天然痘患者の膿疱から抽出した液を接種する人痘接種法(人痘法)で行われた。この予防法は、重症化して死亡するリスクもはらんでいた。ちなみに、ジェンナーは、牛痘にかかった乳搾りの女性は天然痘に罹患しないか、かかっても軽症ですむという事実に着目し天然痘ワクチンを開発した。1798年に天然痘ワクチンの有効性を実証されてからは、牛痘法が主流となった。

『女王陛下のお気に入り』のスタッフが贈るブラックユーモアをちりばめた宮廷ドラマ

『女王陛下のお気に入り』のスタッフが贈るブラックユーモアをちりばめた宮廷ドラマ
企画・脚本そして製作総指揮を担当したトニー・マクナマラは、<br />視聴者を引きつけて離さない世界を作り上げることを最優先に考えた。<br />副題の「時々真実」が示すとおり、史実にとらわれることなく、<br />作品中にフィクションを散りばめ、歴史を現代的なテイストで描かれている。<br />Copyright © 2021 MRC II Distribution Company, L.P.

■ ストーリー
理想を夢見るロマンチックな少女エカチェリーナは、気まぐれな皇帝ピョートルとお見合い結婚するためロシアへやってくる。愛にあふれた輝かしい生活を思い描いていたエカチェリーナだったが、一歩足を踏み入れるとそこは危険で堕落に満ちた保守的な世界だった。やがてそんな世界を変えようと決心する彼女。そのために彼女が唯一しなければならないのは、夫を殺し、教会を打ちのめし、軍隊を黙らせ、宮廷を味方につけること。愛に生きる女性、教師、統治者、友人、ファイターなど一生を通してさまざまな顔を見せてきた女帝エカチェリーナを、時に史実を交えながら現代風に再現した“フィクション”ストーリー。

■ 作品データ
◎原題: THE GREAT/2020年/アメリカ/二カ国語&字幕/HD作品/全10話
◎企画・脚本・製作総指揮: トニー・マクナマラ
◎出演: エル・ファニング、ニコラス・ホルト、 フィービー・フォックス、アダム・ゴドリー、 グウィリム・リー

■「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」公式ページ
・URL: https://www.superdramatv.com/lineup/SNN000004741.html

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

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