フランス北部リール美術館で開催中、『落穂拾い』『晩鐘』で有名な二つのミレー展と行き方案内
フランス北部リール美術館(Palais des Beaux-Arts de Lille)にて、ただいま特別展が二つ開かれています。
ひとつは、『落穂拾い』『晩鐘』などの作品で知られるバルビゾン派のジャン=フランソワ・ミレー作品展(Jean-Français Millet)。もうひとつは、二十世紀のアメリカ芸術へのミレーの影響を集めたミレーアメリカ展です。今回は、それぞれのミレー展の魅力をご紹介します。
バルビゾン派のジャン=フランソワ・ミレー作品展
『夏、落穂拾い』(1853)油彩 ©山梨県立美術館
『晩鐘』(1857-1859)油彩 © Musée d’Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt
約200年前、1814年、ノルマンディの大家族の農家に生まれたミレーでしたが、教養ある神父であった叔父の影響もあり、幼いころから聖書や文学作品に親しんで成長しました。その画才を認められ、シェルブールで絵画の勉強を始めたのは19歳の年。4年後には、奨学金を得てパリの美術学校へと進学します。
当初は、肖像画や、神話、聖書の話を主に描いていたミレーですが、三十代半ばからは、働く人々を題材にした作品を描くようになります。ちょうどそのころ、1849年、ミレーは家族とともに、パリ南東フォンテーヌブローの森に隣接するバルビゾン村に居を移します。このバルビゾン村に、ミレーのほか、ジャン=バティスト・カミーユ・コロー、テオドール・ルソーら風景画家が多く集まったことから、彼らの作風は、のちにバルビゾン派と呼ばれるようになります。
ミレーが風景画を多く描くようになったのは、五十代から。妻の湯治に付き添って、初めて滞在したフランス中央部のブルボネーで、多くのクロッキーやデッサンを手掛けたことがきっかけでした。
バルビゾン派ミレーの作品は、フィンセント・ファン・ゴッホをはじめとするヨーロッパのアヴァンギャルディストを魅了しました。
これだけネームヴァリューのあるミレーですが、西欧で回顧展が開催されたのは、1975年が最後のこと。実に42年も前の話です。これは、その主要な作品の大部分が、ヨーロッパ外に所蔵されていることと無縁ではないでしょう。ミレー出身国であるフランスでさえ、ミレーの作品を堪能できるのは、パリのオルセー美術館とノルマンディのシェルブール美術館に限られています。そのほかの主な作品は、実は、アメリカ合衆国、あるいは日本に所蔵されているのです。
アメリカ芸術へのミレーの影響を集めたミレーアメリカ展
ルイス・W・ハイン (1874-1940) Tenjeta Calone, Philadelphia, 10 years old. Been picking cranberries 4 years. White’s Bog, Browns Mills, N.J. This is the fourth week of school and the people here expect to remain two weeks more. Witness E. F. Brown. Location: Browns Mills, New Jersey (28 Septembre 1910)© Library of Congress, Prints & Photographs Division, Washington, DC
実は、ミレーの生前から、彼の作品は、アメリカで反響を呼んでいました。ミレーの晩年二十年間には、バルビゾンを訪れるアメリカの蒐集家や熱狂的なファン、若いアーティストが後を絶たなかったといいます。
ミレーと交わったアメリカ人アーティストたちは、帰国後、バルビゾンで得たヨーロッパ的レアリスムをアメリカ的に練り直し、作品を発表。その影響は、のちのちアメリカ合衆国で、絵画のみならず、写真や映画、文学作品にも及ぶことになるのです。
具体的には、画家なら、エドワード・ホッパー、写真家には、ルイス・ハイン、ドロシア・ラング、ウォーカー・エバンス、アーサー・ロススタインら。映画製作者では、デヴィッド・ウォーク・グリフィス、ジョン・フォード、テレンス・マリック、マイケル・チミノらが挙げられます。
アーサー・ロススタイン (1915-1985) Farmer and sons walking in the face of a dust storm. Cimarron County, Oklahoma (1936 Apr.)
© Library of Congress, Prints & Photographs Division, Washington, DC
今回のミレー アメリカ展は、これら二十世紀のアメリカ芸術へのミレーの影響を集めたものです。ミレー作品の野良仕事や農夫の様子は、アメリカ人の目には、新大陸へ渡り、荒れ地を耕し、国境を西へ西へと広げてきた先駆者に重なるものなのでしょう。
リール美術館の二つのミレー展は、ミレー自身の代表作と、ミレーの影響を受けたアメリカ芸術を同時に鑑賞できる稀な機会となっています。
リール美術館へのアクセスと利用案内
■DATA
リール美術館
ミレー展:2018年1月22日まで
住所:Place de la République, 59000 Lille
▷公式サイト
行き方:
メトロ1番線 République Beaux-Arts駅下車すぐ。
バスは12番、18番、Citadine、Liane1、Liane90の、停留所République Beaux-Arts下車。
開館時間:月曜:14時~18時、水・木・土・日:10時~18時、金:10時~20時
休館日:火曜日
会期中の閉館日:12/25, 1/1
その他:12/24と12/31は17時まで。12/26と1/2は火曜日ながら開館
入館料:
二つの展覧会のみ:10ユーロ(大人)
展覧会+常設展:11ユーロ(大人)
常設展のみ:7ユーロ(大人)
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
【記載内容について】
「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。
掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。
本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。
※情報修正・更新依頼はこちら
【リンク先の情報について】
「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。
リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。
ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。
弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。