ルーヴル・アブダビ美術館で紐解く日仏美術の出合い(アラブ首長国連邦・アブダビ)
10月を間近に控え、季節はすっかり秋。涼しくなって過ごしやすい季節がやってきました。日本ではよく「芸術の秋」といわれますが、最近、美術館へ出かけたのはいつですか。2017年秋、アラブ首長国連邦のアブダビに登場して世界をあっといわせたルーヴル・アブダビ美術館。この美術館で、2018年9月6日(木)から開かれている特別展「日本との親近性:近代装飾の始まり(Affinités japonaises: la naissance du décor moderne)」を紹介します。
湾に浮かぶ宝箱のような建築
ペルシャ湾を臨むルーヴル・アブダビ美術館は、フランスの建築家ジャン・ヌーヴェルの斬新なデザインによる建物です。八層に重ねられた銀色のドームが覆う白い姿は、訪れる人を魅了し続けており、芸術という宝物を入れる宝箱にふさわしい外観です。
フランスとアラブ首長国連邦の提携により生まれたこの美術館には、10年間の予定で、フランスから多くの名作が貸し出されています。ちなみに、ルーヴルの名を冠するのは30年間、また特別展へのフランスの支援は15年間と予定されています。
複数の美術館から集められた珠玉の名作
今回の特別展の企画に尽力したのは、パリのオルセー美術館のイザベル・カーン(Isabelle Cahn)氏です。日本の伝統的美が、19世紀終わりのフランスの近代絵画の発展に及ぼした影響を明らかにします。
取り上げられるアーティストは12名。うち5人は、日本の大家、葛飾北斎、原在明、歌川広重、狩野探信、東洲斎写楽です。浮世絵10枚と屏風3点が集められました。
これらと対峙して置かれるのは、フランスの画家7人のものです。特にポール・セリュジエ、ピエール・ボナール、モーリス・ドゥニ、ケル=グザヴィエ・ルーセル、エドゥアール・ヴュイヤールといったナビ派の画家の名前が目立ちます。そのほか、マルグリット・セリュジエやポスト印象派のオディロン・ルドンの作品も選ばれていました。
これらの作品は、ルーヴル・アブダビ美術館所蔵のもの以外は、オルセー美術館、ギメ東洋美術館、パリ装飾美術館から集められたものです。
世界を平面で表現する
日本の絵画が、フランス美術に与えた影響は多くあります。たとえば、遠近法や陰影を用いず二次元で世界を表現する点、時間の経過を示す物語のような構成、屏風の画期的な使用法、精神性や夢など目に見えない世界の探求が挙げられます。
「写実」を重んじる当時の伝統から離れようとしてたナビ派が、その影響を受けたのも、当然のことといえるでしょう。
「日本との親近性:近代装飾の始まり(Affinités japonaises: la naissance du décor moderne)」展は、2018年11月24日(土)まで開催される予定です。期間中、コンサートや講演会、ティーン向けに漫画のアトリエなども予定されています。特別展用のチケットはなく、通常の美術館チケットで入場可能です。
マニュエル・ラバテ館長の言葉を借りれば、「現代人のアイデンティティを形作る、文化と社会の関係に光を当てる」この特別展。19世紀から20世紀にかけての東洋と西洋の対話を紐解くよすがとして、日本の美術が取り上げられたことは、日本人としてはやはり嬉しいものです。
いかがでしたか。ルーヴル・アブダビ美術館で開催中の特別展「日本との親近性:近代装飾の始まり(Affinités japonaises: la naissance du décor moderne)」を紹介しました。アラブ旅行の際は、ぜひ立ち寄ってみてください。
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
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