完全保存版 世界遺産・イビサ島を100倍楽しむ徹底ガイド(スペイン)

公開日 : 2019年09月30日
最終更新 :
筆者 : 今岡史江
城壁に囲まれている旧市街ダル・ビラとその手前のマリナ地区
城壁に囲まれている旧市街ダル・ビラとその手前のマリナ地区

地中海に浮かぶ世界遺産・イビサ島には、世界中の観光客を虜にする魅力があります。歴史探訪にはじまり、自然を生かしたアクティビティー、食事のクオリティが高く、地元料理が味わえるダイニングバーから世界で一番料金が高いといわれるレストランまで揃います。ホテルライフを大切にする人も大満足のホテルがたくさんあり、クラブミュージックの聖地といわれるほどナイトライフも充実しています。さらには、雑貨好きな人にはたまらないヒッピーマーケットも。パワースポットやサンセットで癒されたり、インスピレーションを得られたり……。世界遺産・イビサ島を100倍楽しむ方法を紹介します。

海上から望むイビサ島 ©iStock
海上から望むイビサ島 ©iStock

イビサ島は、地中海に浮かぶスペイン領バレアレス諸島のひとつです。見渡す限り続くターコイズブルーの水平線、中世の歴史を感じる町並み、エキサイティングなクラブパーティーなど新旧入り交じるさまざまな体験ができます。イビサ島を楽しむ4つのポイントとともに見どころを紹介しましょう。

(1)イビサ島の世界遺産

(1)イビサ島の世界遺産
城壁と砲台 ©iStock

1999年、「イビサ島の生物多様性と歴史地区」が世界遺産に登録されました。スペインでは珍しい複合遺産のうちのひとつです。スペインの複合遺産は、イビサ島とピレネー山脈のモンテ・ペルドゥの2ヵ所だけです。

イビサ島は、島の3ヵ所が文化遺産に、1ヵ所が自然遺産に登録されていますが、「島全体が世界遺産」といわれるのをよく聞きます。それは、文化と自然がこの島の成り立ちと深く関わっているからでしょう。

かつて、イビサ島では、この島を開拓したフェニキア人が残していった塩やブドウ酒、オリーブの恵みを今なお享受しています。まさしく、これらの特産品が文化遺産を継承しているといえるのかもしれません。

サ・カレタ(Sa Caleta)のフェニキア人の入植地跡
サ・カレタ(Sa Caleta)のフェニキア人の入植地跡

●見どころ(1)サ・カレタ(Sa Caleta)のフェニキア人の入植地跡

城壁のある場所は、フェニキア人によって開拓されました。彼らは、海の水を引いて塩田を作り、ブドウやオリーブの木を持ってきたといわれています。塩田は世界遺産ではありませんが、当時、食料の保存に欠かせない塩は、冷蔵庫が発明されるまで貴重な産物として扱われました。イビサ島の塩は、「白い金」と呼ばれていたくらいです。

今でもフェニキア人と同じやり方で塩を作っている ©iStock
今でもフェニキア人と同じやり方で塩を作っている ©iStock

イビサ空港内からガラス越しに塩田が見られます。渡り鳥であるフラミンゴのなかには、この塩田に1年中留まっているものも少なくありません。

イビサ港から船で出る時に見ることができる景色
イビサ港から船で出る時に見ることができる景色

●見どころ(2)ルネサンス様式の城壁とマリナ地区

城壁は、16世紀にスペイン王・フェリペll世が王子だった時、イタリアから建築家を呼び寄せて造らイタリアから建築家を呼び寄せ造らせたものです。その特徴は大砲を載せることのできる陵堡があること。1235年にハイメl世が島を征服して以来、トルコやアフリカから海賊が頻繁に襲ってくるようになりました。大砲はその防戦用として使われました。

さまざまな人種に統治されてきたイビサ島ですが、基本的にいつも自治権が与えられていました。マリナ地区は城壁と港の間の地区です。城壁の外には漁師や商人が住み、活気がありにぎわっていたことが簡単に想像できます。ヨットハーバーの横にコルサリオの記念碑とヒッピー家族の像があるのもイビサ島らしい風景です。

プッチ・デ・モリンス(Puig de Molins)の古墳群 ©iStock
プッチ・デ・モリンス(Puig de Molins)の古墳群 ©iStock

●見どころ(3)プッチ・デ・モリンス(Puig de Molins)の古墳群

城壁の西側の小山に約5,000ヶ所の墓があるといわれています。確認されているだけで300ヶ所。フェニキア人やカルタゴ人は、死後の世界のために必要なものを死者と一緒に棺の中に入れたそうです。

棺の中から、コンスタンティノープルの硬貨やエジプトのフンコロガシの形をした遺物が見つかり、地中海全域を行き来していた様子がわかります。それらの遺物は、プッチ・デ・モリンスの考古学博物館に展示されています。博物館を通って大きな墓穴のひとつに入ることができます。彼らが信仰していた女神像などを見るのも大変興味深いです。

@istock
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●見どころ(4)ポシドニアという海洋植物の群生地と生態系

イビサ島とフォーメンテラ島の周辺に群生しているポシドニアは、以前は地中海近海ではどこにでも生育していたそうです。しかし、近年ではイタリア沿岸からどんどん消滅しているとのこと。ポシドニアは、光合成をし、私たちにたくさんの酸素を供給してくれます。この海洋植物のおかげで、イビサ島近海には約250種以上の生物が生存しているといいます。

(2)イビサ島における海賊の歴史

(2)イビサ島における海賊の歴史
コルサリオを称える碑

地中海にある島々は、海賊の攻撃や搾取の脅威にさらされていました。イビサ島もその例外ではありません。海賊は、物だけ盗んでいったわけではなく、人さらいもしました。すぐ隣のフォーメンテラ島が200年間ほど無人島になったことがあるのはそのためです。

イビサ島には、その海賊から身を護るために逃げ込んだ塔や教会があります。海賊の接近を知らせる狼煙(のろし)をあげる塔もあります。今でこそ美しいそれらの建物は、当時は城壁の外の村の住人による海賊対策だったに違いないでしょう。

さらに、これらの海賊に応戦するために、政府公認の海賊がいました。彼らのことをコルサリオといい、彼らを称えた碑がマリナ地区に建てられています。

ライトアップされ幻想的な城壁
ライトアップされ幻想的な城壁

●見どころ(1)大砲を設置するための陵堡を7棟備えた頑丈な城壁

城壁は、アラブ時代に頑丈なものができあがりましたが、16世紀に入り大砲を備えた海賊船に応戦するため改築を余儀なくされました。各陵堡には聖人の名前が付けられ、「7」というキリスト教において完全の意味をもつ数の陵堡により、城壁の中は護られました。

島の7ヵ所に設置されたディフェンスタワー
島の7ヵ所に設置されたディフェンスタワー

●見どころ(2)海賊の接近を知らせる狼煙をあげるための塔

現存する塔の数は7つ。上の写真は、イビサ島最南端にあるSes Portes(セス・ポルテス)の塔。海賊船は、無人島化したフォーメンテラ島に停泊し、攻めてきたので、必ずこの塔の前の海峡を通りました。そのため、このディフェンスタワーは、ほかの塔に比べ大きく、中には大砲も備えていました。

丘の上に建つ教会
丘の上に建つ教会

●見どころ(3)分厚い壁で要塞の役割を果たしてきた教会の数々

また、カルタゴ人の家のように「壁は分厚く窓は小さく」建てられた教会は、要塞の役割も同時に果たしていました。狼煙を見た人たちは教会に逃げ込み、海賊たちが町を去るまで閉じこもっていたのです。

上の写真は、Santa Eulalia(サンタ・エウラリア)教会。また、San Miguel(サン・ミゲル)の教会も高台にあり、町中にあるSan Jordi(サン・ジョルディ)の教会やSan Antonio(サン・アントニオ)の教会は、その様相から要塞だったようです。

分厚い白い壁
分厚い白い壁

上の写真は、サン・ローレンソの塔のある集落Balafia(バラフィア)の一軒。近くに教会もない村の人たちは、自分の家に塔を造り、その中で身を潜めていました。

エル・コルサリオ(El Corsario)からの眺望
エル・コルサリオ(El Corsario)からの眺望

旧市街ダル・ビラのなかにエル・コルサリオ(El Corsario)という名のホテルがあります。コルサリオというのは、政府公認の海賊の総称。「公認の海賊」に外から来る海賊から島を守ってもらっていました。その海賊の屋敷がホテルになっています。ただ、2019年9月現在、改装中で中を見ることはできませんが……。

アニメ『ワンピース』に出てくる七武海は、コルサリオがモデルともいわれています。スペインの無敵艦隊を撃墜したのは、イギリスのドレーク船長。Sirの称号をもらった彼も海賊でした。

(3)イビサ島が育む豊かな自然

(3)イビサ島が育む豊かな自然
パワースポットで名高いエス・ベドラ(Es Vedra)島

イビサ島の周辺には、パワースポットで名高いエス・ベドラ(Es Vedra)島や美しい入り江やビーチが60ヵ所以上もあるフォーメンテラ(Formentera)島があります。有名なパワースポットを訪れ、美しいサンセットを楽しみ、島中に咲き乱れるアーモンドの花を堪能し、小道のサイクリングやドライブをしたり……。ビーチに出なくても、夏でなくとも、季節関係なく自然を満喫できます。

茜色に染まるカラ・コンタ(Cala Comte)ビーチ
茜色に染まるカラ・コンタ(Cala Comte)ビーチ

●見どころ(1)カラ・コンタ(Cala Comte)ビーチでのサンセット

カラ・コンタ(Cala Comte)ビーチは、イビサ島の北西部に位置するビーチです。イビサ島有数のサンセットスポットとして知られ、夕暮れ近くになると多くの観光客がこのビーチを訪れます。ビーチは小さい入り江のような形状のため、波がおだやかで、まったりとした気分で夕日を眺められます。

エス・ベドラ(Es Vedra)島
エス・ベドラ(Es Vedra)島

●見どころ(2)パワースポットで有名なエス・ベドラ(Es Vedra)島

エス・ベドラ(Es Vedra)島は、イビサ島の南西にある小さな岩の島です。高さ413mの無人島で、北極や南極と同じくらいの磁場をもつといわれています。あまりの磁力により、大きなパワーを感じる方も1人や2人ではありません。ボートをチャーターして島の沿岸を周遊したり、カラ・ドール(Cala d'Hort)ビーチで泳いだりと、のんびりと過ごせます。

フォーメンテラ(Formentera)島 ©iStock
フォーメンテラ(Formentera)島 ©iStock

●見どころ(3)白浜がどこまでも続くフォーメンテラ(Formentera)島

フォーメンテラ(Formentera)島は、イビサ島の南にある島です。イビサ港から船が出ており、高速船なら約30分、フェリーだと約1時間で到着します。フォーメンテラ島は、どこのビーチも白砂が続き、海水が特にきれいです。筆者は、いつもイジェテス(Illetes)ビーチでくつろぎます。

(4)イビサ島の最新の外来文化

(4)イビサ島の最新の外来文化
ヒッピーマーケットは雑貨の宝庫。掘り出し物も

イビサ島は、時代によって移り変わる外来文化を素直に受け入れてきました。1950~60年代はヒッピーで有名になり、1990年代以降はクラブミュージックで、2011年以降はエンターテインメント性のあるガストロノミーを追及する場所になっています。

手作りの服や雑貨がそろうマーケット ©iStock
手作りの服や雑貨がそろうマーケット ©iStock

●見どころ(1)イビサ島で生まれたファッション、アドリブ(Adlib)

アドリブ(Adlib)は、イビサ島で生まれたファッションです。地元の人の服装にヒッピーのエッセンスが加わったものです。その潮流を受け、イビサ島ではメルカディージョ(Mercadillo)と呼ばれる市場がいたるところにたちます。

会場を盛りあげるクラブミュージック ©iStock
会場を盛りあげるクラブミュージック ©iStock

●見どころ(2)クラブカルチャーをけん引する有名DJたち

イビサ島では、70年代頃よりクラブ文化が浸透し始めます。90年代になると、「DJの聖地」と呼ばれるようになり、クラブミュージックが島全体を席巻します。数千人を収容するクラブが現れ、世界の有名DJが大音量で盛りあげます。

星をもったシェフが腕をふるう ©iStock
星をもったシェフが腕をふるう ©iStock

●見どころ(3)エンターテインメント性のあるガストロノミー

2011年以降、星をもったシェフが新しい試みをしようとイビサ島に進出しています。グランホテル内にある「ハートイビサ(HEART Ibiza)」は、スペインを代表するシェフのアドリア(Adriá)兄弟とシルク・ド・ソレイユの監督であるギー・ラルベルテ(Guy Lariberté)が運営するレストラン。プロジェクションマッピングを駆使した芸術的なショーを見ながら、絶品の料理が味わえます。

いかがでしたか。世界遺産・イビサ島を100倍楽しむ方法を紹介しました。歴史を鑑み客観的に眺めてみると、ますますおもしろい島だと思います。ぜひ一度遊びにいらしてください。

筆者

スペイン特派員

今岡史江

1993年よりスペイン在住。車好きが高じて自動車整備士の資格をとり、ただ今トヨタ・イビサでメカニック中。

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