パリの世界遺産セーヌ川観光のすすめ クルーズで主要モニュメントを一気に攻略

公開日 : 2019年12月22日
最終更新 :

パリ観光のハイライトであるセーヌ川。パリ市内セーヌ両岸には、ノートルダム大聖堂やルーブル美術館、エッフェル塔などのパリを代表するモニュメントが立ち並びます。セーヌ川を押さえることは、まさにパリを押さえるということ。そのセーヌ川を徹底的に解説します。

目次

セーヌ川について

セーヌ川について
ノルマンディー地方を流れるセーヌ川の様子 ©iStock

セーヌ川はブルゴーニュ地方の中心都市・ディジョンの北西、ラングル高原を源とする全長776kmの川です。源流から湧き出た水は、北西シャンパーニュ地方のトロワなどを経由し、いくつかの川と合流した後にパリ市内を通過。ノルマンディー地方ルーアン、そしてルアーブルを通りイギリス海峡に注ぎます。昔から水運に利用され、現在も多くの船が行き交っています。

セーヌ川はパリ付近で何度か大きく蛇行する ©iStock
セーヌ川はパリ付近で何度か大きく蛇行する ©iStock

パリはセーヌ川を中心に町がふたつに分かれます。川より北側を「右岸(リヴ・ドロワット)」、川より南側を「左岸(リヴ・ゴーシュ)」と呼びます。パリ市内はカタツムリの殻のように右巻きに20の区に分かれていますが、右岸にはそのうち1〜4区、8〜12区、16〜20区があり、左岸には5〜7区および13〜15区があります。

シャンゼリゼ 大通りと凱旋門 ©iStock
シャンゼリゼ 大通りと凱旋門 ©iStock

右岸の代表的な場所といえば、まずエトワール凱旋門から伸びるシャンゼリゼ大通りを中心とした地区です。高級ブランド街であるモンテーニュ大通り、大統領府のエリゼ宮などがあります。シャンゼリゼ大通りより東側、ルーブル美術館やパレ・ロワイヤル、オペラ座(オペラ・ガルニエ)、チュイルリー公園、コンコルド広場、百貨店(ギャラリー・ラファイエット・パリ・オスマン店プランタン・オスマン本店)が立ち並ぶ地区も観光客に人気です。

プランタン・オスマン本店屋上から見たオペラ座 ©iStock
プランタン・オスマン本店屋上から見たオペラ座 ©iStock

さらに東のレアールからバスティーユ広場までは、ショッピングセンターのフォーラム・デ・アール、パリ市庁舎やマレ地区の中世貴族の館群、個性的なブティックが立ち並びます。セーヌ川からは離れますが、サクレ・クール聖堂を中心に坂道が入り組んだモンマルトル地区も右岸にあります。

セーヌ川の中洲も忘れてはいけません。パリ発祥の地であるシテ島には、ノートルダム大聖堂やサント・シャペル、コンシェルジュリーなど、見逃せないスポットが詰まっています。

右手の中洲がシテ島とノートルダム大聖堂 ©iStock
右手の中洲がシテ島とノートルダム大聖堂 ©iStock

左岸の代表的なエリアといえば、カルチェ・ラタンからサンジェルマン・デ・プレにかけてでしょう。カルチェ・ラタンは、ソルボンヌなど学術機関が集積する学生街。そしてサンジェルマン・デ・プレ界隈は、レ・ドゥー・マゴ、カフェ・ド・フロールなど、かつて文化人が集まった地区でした。

サンジェルマン・デ・プレから南に行くとモンパルナス地区に入り、かつてシャガールや藤田嗣治、モディリアニなど、20世紀初頭にかけて「エコール・ド・パリ」と呼ばれた芸術家が集った地域でした。

サンジェルマン・デ・プレ教会の塔 ©iStock
サンジェルマン・デ・プレ教会の塔 ©iStock

サンジェルマン・デ・プレの西には、セーヌ川に沿ってオルセー美術館や国民議会、ナポレオンの墓があるアンヴァリッドが立ち並び、その先にエッフェル塔があります。

これらパリのセーヌ両岸は、1991年に「パリのセーヌ河岸」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。具体的には市内シュリー橋からイエナ橋までの地域を指しており、上述した建物の多くが「パリのセーヌ河岸」に含まれています。

セーヌ川観光の方法

セーヌ川観光の方法
©iStock

セーヌ川は船から見るか河岸から見るかで、景色もずいぶん変わります。遊覧船の場合、選択肢は「遊覧のみ」「ランチ付き」「ディナー付き」の3つ。主要な運行会社は「バトー・ムーシュ」「バトー・バリジャン」「ヴデット・デュ・ポン・ヌフ」の3社です。これらに加えて「バトビュス」という水上バスがセーヌ沿いのスポットをつないでいます。

食事なしの遊覧コースは、乗船場が違うものの各社ほぼ同じで約1時間のクルーズです。エッフェル塔やオルセー美術館、ルーブル美術館、ノートルダム大聖堂、パリ市庁舎などセーヌ川沿いの有名モニュメントを水上から巡ります。クルーズだけではなく、川沿いのスポットの移動も兼ねたい場合はバトビュスが便利。こちらは30分間隔で運航されています。

バトー・パリジャンとバトビュスの乗船場 ©iStock
バトー・パリジャンとバトビュスの乗船場 ©iStock

食事付きのクルーズは、昼夜どちらもそれぞれの良さがあります。料金的に手軽なのがランチ付きのコース。ランチ付きクルーズは、船内に明るく光が差し込む中、眼前を次々と過ぎ去る歴史的建造物を眺めながら食事を楽しめます。一方でディナー付きクルーズは、ランチより値は張りますが食事内容も豪華で、夜景の中に浮かぶロマンチックな雰囲気で食事の時間を過ごせます。

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クルーズだけがセーヌ川観光の楽しみではありません。セーヌ川両岸には遊歩道があり、パリ市民の散歩・ジョギングコースになっています。川沿いを歩きつつ、またベンチに座って水面を眺めながら、行き交う遊覧船を眺めて過ごす時間もまた格別です。

セーヌ川クルーズ見どころ

セーヌ川クルーズ見どころ① セーヌ川に架かる橋巡り!
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①セーヌ川に架かる橋巡り!

パリ市内のセーヌ川には、合わせて37本の個性ある橋が架かっています。その中で最も美しい橋といわれているのが、アレクサンドル3世橋です。

アレクサンドル3世橋と左奥はアンヴァリッド ©iStock
アレクサンドル3世橋と左奥はアンヴァリッド ©iStock

同橋は1900年のパリ万博の際に完成しました。「もっとも美しい」といわれる理由は、欄干を彩る重厚な彫刻とアールヌーヴォー様式の街灯です。夜はそれらがライトアップされ、さらに荘厳さが増します。アレクサンドル3世橋は、右岸のグラン・パレ国立ギャラリーおよびプティ・パレ(パリ市立美術館)と、左岸のアンヴァリッドを結んでいます。

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映画好きにとってはパリの橋といえばポン・ヌフを連想する人は多いかもしれません。同橋は、映画『ポンヌフの恋人』の舞台になりました。「ポン」はフランス語で「橋」。「ヌフ」は「新しい」という意味。つまり「新橋」ですが、パリに現存するセーヌ川の橋の中ではもっとも古い橋です。シテ島西端を中継して右岸と左岸をつなぎ、シテ島部分にはブルボン朝の始祖であるフランス国王アンリ4世の像が立っています。

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ルーヴル宮とフランス学士院をつなぐ橋がポン・デ・ザール(芸術橋)です。パリで最初の鉄製の橋として19世紀に架けられました。歩行者専用の橋のため多くの人にとっての散策コースになっています。

同橋は、かつて欄干にカップルの名前を書いた南京錠を掛け、その南京錠の鍵をセーヌ川に投げ込むことで愛の誓いとする行為がなされていましたが、南京錠の重さに欄干が耐えられず崩れる危険性があるのと景観保護のため、現在はすべて撤去されています。欄干の構造も錠を掛けられない仕様に変わりました。

②船から見られる観光スポット

セーヌ川クルーズの見どころ② 船から見られる観光スポット
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セーヌ川クルーズではパリの主要観光スポットを一気に巡ることができます。船から見られるスポットはどれも押さえておきたい場所が集まっています。

■エッフェル塔
パリを象徴するモニュメント。パリ、そしてフランスの建物の中ではもっとも有名ですが、じつはまだまだ若手です。エッフェル塔は、フランス革命100年を記念して開かれた1889年パリ万博の際に建てられました。高さは324m。エッフェル塔という名前は設計者のギュスターヴ・エッフェルに由来します。3階建の鉄塔であり、最上階からは地上276mの高さの眺望を楽しめます。エッフェル塔近くにはバトー・パリジャンの乗船場もあります。

≫≫≫フランス・パリのエッフェル塔を100%楽しむ完璧ガイド

右岸からセーヌ川越しに望むエッフェル塔 ©iStock
右岸からセーヌ川越しに望むエッフェル塔 ©iStock

ルーヴル美術館
元は王宮だったものを、フランス革命後の1793年に美術館として整えました。内容はフランス王室が所有していたコレクションを中心に、世界各国の美術品が収集・展示されています。『モナ・リザ』『ハンムラビ法典』『ミロのヴィーナス』『サモトラケのニケ』など有名なものばかり。また今ではルーヴル美術館の顔の1つとなったエントランス部分の「ピラミッド」は、イオ・ミン・ペイの設計で1989年に建てられました。

ロワイヤル橋と奥にルーヴル美術館 ©iStock
ロワイヤル橋と奥にルーヴル美術館 ©iStock

オルセー美術館
1848年〜1914年の作品を展示するパリを代表する美術館です。かつてのオルセー駅を改装し1986年に開館しました。新古典主義やロマン主義、バルビゾン派、印象派、後期印象派、象徴主義といった近代フランス美術の作品を鑑賞できます。

オルセー美術館とバトビュスなどの乗船場 ©iStock
オルセー美術館とバトビュスなどの乗船場 ©iStock

ノートルダム大聖堂
パリ発祥の地シテ島に鎮座するゴシック様式の大聖堂です。現在あるような形として建築が始まったのは1163年。そこから幾度も増改築されて現在の形になりました。「ノートルダム」とは「我らの貴婦人」という意味。つまり聖母マリアのことです。2019年4月15日に発生した火災により尖塔や屋根などを焼失しました。現在は再建工事中のため入場できません。

焼け落ちた後のノートルダム大聖堂の屋根と尖塔跡 ©iStock
焼け落ちた後のノートルダム大聖堂の屋根と尖塔跡 ©iStock

■パリ市庁舎
パリの行政機関が入るルネサンス様式の建物。現在の市庁舎は1871年に火災で焼失した後、再建されたものです。市庁舎内では、しばしば企画展が開かれている他、パリ市のオフィシャルギフトショップ「パリ・ラデヴー」も入ります。

市庁舎前の広場でもしばしばイベントが開かれる ©iStock
市庁舎前の広場でもしばしばイベントが開かれる ©iStock

セーヌ川クルーズの運営会社

セーヌ川クルーズの運営会社
右岸にあるバトー・ムーシュの乗船場 ©iStock

セーヌ川クルーズは「バトー・ムーシュ」「バトー・パリジャン」「ヴデット・デュ・ポン・ヌフ」の3社が遊覧船を運航しています。各社のクルーズ内容を紹介します(情報は2019年12月時点)。

■バトー・ムーシュ
4〜9月は10時〜22時30分の時間帯を30分間隔で、10〜3月は11時〜21時20の時間帯を40分間隔で運行しています。料金は大人1人14ユーロ。ランチ付きクルーズは大人1人69ユーロです。12時30分に出港し、1時間45分かけてセーヌ川を遊覧します。ディナー付きクルーズは大人1人79ユーロから。20時30分に出港し、2時間15分の船上での食事タイムになります。

・URL: http://bateaux-mouches-japon.com/

バトー・パリジャンの乗船場は左岸側 ©iStock
バトー・パリジャンの乗船場は左岸側 ©iStock

■バトー・パリジャン
4〜9月は10時15分〜22時30分の時間帯を30分間隔(13時30分と19時30分の出航は無し)で出港します。10〜3月は11時〜21時30の時間帯に1時間間隔で出ています。料金は大人1人15ユーロ。ランチ付きクルーズは大人1人59ユーロからで、12時45分に出港し1時間45分かけてセーヌ川を遊覧します。ディナー付きクルーズは大人1人69ユーロから。20時30分に出港し、2時間30分かけてクルーズします。

・URL: https://www.bateauxparisiens.com/

©iStock
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■ヴデット・デュ・ポンヌフ
3月15日〜10月31日は10時30分〜22時30分の時間帯を10分〜1時間15分間隔(日により変動)で、10月1日〜3月14日は10時30分〜22時の時間帯を30分〜1時間30分間隔(日により変動)で出港しています。料金は大人1人14ユーロ。ランチ付きクルーズは大人1人42ユーロです。12時30分に出港し、1時間30分かけてセーヌ川を巡ります。ディナー付きクルーズは大人1人72ユーロ。21時15分に出港し、2時間の食事時間です。

・URL: https://www.vedettesdupontneuf.com/

クルーズ以外の楽しみ方

クルーズ以外の楽しみ方
川沿いは天気の良い日には多くの人々が憩いの場になる ©iStock

セーヌ川の楽しみ方はクルーズだけではありません。夏にセーヌ河岸で開かれる「パリ・プラージュ」や河岸に点在するカフェ巡りも要チェックです。

パリ・プラージュとは、セーヌ河岸を浜辺に見立て(「プラージュ」とはフランス語で「浜辺」のこと)、パリにいながらにしてバカンス気分を楽しもうというイベントです。毎年7月から8月末まで(その年によって若干の日程の前後あり)開かれています。パラソルが立ち並び、期間中はショップや子供向けの遊具やイベントが行われています。同イベントは2002年から始まり、一時期までは実際に砂を敷き詰めて砂浜を再現していましたが、2017年から砂浜は取りやめになりました。

セーヌ河岸で始まったイベントですが、現在ではセーヌ川沿いの地区だけでなく、セーヌ川につながるラ・ヴィレット貯水池でも行われています。

©iStock
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パリ市内には個性的なカフェやサロン・ド・テが点在しています。それらお店巡りも見逃せません。

東から順に一例を紹介すると、セーヌ川の中洲サン・ルイ島にあるアイスクリームで有名なベルティヨン、ノートルダム大聖堂を眼前に望めるカルチェ・ラタンのシェークスピア・アンド・カンパニー・カフェは、いつも多くの人で賑わっています。左岸を代表するカフェ、レ・ドゥー・マゴとカフェ・ド・フロールも一度は訪れてみたいお店です。

古本屋シェークスピア・アンド・カンパニー ©iStock
古本屋シェークスピア・アンド・カンパニー ©iStock

右岸だと、マレ地区にあるレ・フィロゾフも人気。左岸のクチュームは本格派コーヒーを堪能できます。右岸ルーヴル美術館からコンコルド広場までの間にあるアンジェリーナやセバスチャン・ゴダールといったサロン・ド・テは、パリらしい絶品スイーツを堪能できます。エッフェル塔の眺望を楽しめるトロカデロ広場沿いでは、カレットで優雅にお茶をいただいても良いですね。

パリはカフェだけでなく食事も充実しています。ランチとディナーの時間、そしてお腹の空き具合と相談しながらカフェ巡りの予定を立てるのは、本当に困難。うれしい悩みです。

まとめ:パリの世界遺産セーヌ川観光へ

パリの世界遺産セーヌ川観光へ
©iStock

パリはセーヌ川と共に発展してきました。そのため観光スポットも川沿いに多く点在しています。パリは見どころが集積する町です。行き先に迷ったり時間が限られている時は、まずセーヌ川を中心に巡ってみてください。パリの概要をつかめるはずです。

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筆者

フランス特派員

守隨 亨延

パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。

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