フランス人お気に入りの村2018年トップに輝いたフランドル・カッセル(フランス)の魅力

公開日 : 2018年07月01日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき
©Isabelle D'Hulst - OT Coeur de Flandre
©Isabelle D'Hulst - OT Coeur de Flandre

テレビ局・フランス2の人気番組のひとつに、『フランス人の好きな村』があります。これは、フランスの各地方から候補の村を選び、それぞれの魅力を放送したのち、最後に視聴者の投票を含めた評価で順位をつけるものです。2012年から、毎年企画・放映されています。『フランス人の好きな村2018』の最終投票は、2018年6月19日(火)に行われ、栄光の一位には、フランス北部フランドル地方のカッセル(Cassel)が選ばれました。今回は、フランス人の好きな村、カッセルを紹介します。

ベルギーとフランスに広がるフランダース

ベルギーとフランスに広がるフランダース
©Isabelle D'Hulst - OT Coeur de Flandre

フランドルは、英語だとフランダース。その名を聞いて思い浮かべるのは、ベルギーのフラマン語圏という人が多いのではないでしょうか。けれども、フランドルは、もともとは旧フランドル伯領を指し、そこにはフランス北部も含まれます。歴史をともにした時期の長いこの国境周辺は、伝統や風習も似ていて、国境を越えて合同で行うお祭りもあるくらいです。

また、この辺りは、地名もフラマン語が混ざっているものが多く、フランス人でも正しい読み方が分からないものがたくさんあります。たとえば、Godewaersvelde。「ゴッドワルスヴェルドゥ」と呼んでいる人が多いようですが、土地の人に聞くと、微妙に違って聞こえます。

ほかにも、Honschoote。これもまた会う人それぞれ発音が異なり、「オンショット」という人が多いようですが、土地の人に聞くと、ほぼ「オンシュコット」に近い発音のようです。

カッセルの歴史

カッセルの歴史
La vue panoramique de Cassel(カッセルのパノラマ風景)、作家不詳、17世紀末、県立フランドル美術館所蔵

カッセルには、鉄器時代にはすでに人が住みついていました。その後、紀元前500~200年ごろからガリア人メナピー族が移り住み、この土地を「要塞」という意味のケルト語 Kasteel と名付けました。カッセルの地名は、こんな古くに起源があったのです。このメナピー族は、塩を生産し、この塩は遠くはローマまで運ばれていたようです。

その後、ローマ人、フランク族などの出入りがあり、9世紀には、フランドル伯領に。カッセルは、戦場となったこともあり、いまも「カッセルの戦い」と呼ばれるものが、複数歴史に刻まれています。また両大戦、特に第二次世界大戦での被害も大きかった地域です。

世界遺産になった巨人の伝統

世界遺産になった巨人の伝統
県立フランドル美術館の入り口 ©Kanmuri Yuki

カッセルの中心は、細長い広場、グランプラスです。この真ん中あたりに市庁舎も建っています。もとの市庁舎は1940年の爆撃で破壊されたため、現在観られるのは、のちに建てられた新しいものです。

けれども、その斜め向かいに位置する県立フランドル美術館(Musée départemental de Flandre)は、1634年に建てられた古い建築物です。ここには、フランドル地方の歴史や風習を物語る美術品が展示されています。

Alexis Bafcop, “Le Carnaval de Cassel”, 1876
Alexis Bafcop, “Le Carnaval de Cassel”, 1876

たとえば、上の絵は、カッセルのカーニヴァルを描いた、アレクシ・バフコップ(Alexis Bafcop)の絵です。フランス、ベルギーともに、この地方では、村それぞれに特有の巨人が複数体いて、それぞれに祭りが催される風習が残っており、UNESCOの世界遺産にも登録されています。

この絵のカーニヴァルにも、カッセルの巨人であるルーズ・パパ(Reuze Papa)が登場しているのが分かるでしょうか。身長6メートルを超えるルーズ・パパは、フランス側の巨人で、もっとも古いもののひとつで、その誕生は1827年のことでした。

触れられる『カッセルのカーニヴァル』
触れられる『カッセルのカーニヴァル』

この県立フランドル美術館のおもしろいところは、視覚に難のある人向けに、いくつかの作品を、手で触ってわかるものとして展示してあることです。上述のカーニヴァルの絵も、このように手で触って分かる形でも展示されています。

グランプラスを囲む見どころ

グランプラスを囲む見どころ
©Isabelle D'Hulst - OT Coeur de Flandre

グランプラスには、美術館以外にも、趣のある建物がいくつか残っています。また、レストランや喫茶店も複数あり、村の中心でありながら、のんびり寛げる雰囲気を持っています。

レストランのなかには、2017年に『ミシュランガイド』で一つ星を獲得したオー・ボヌール・ド・ラ・ターブル(Haut Bonheur de la table)もありますので、グルメ旅行を目指す人にも喜んでもらえる行き先です。ただし、席数が少ないので、事前の予約をおすすめします。

ノートル・ダム・ド・ラ・クリプト教会 ©Isabelle D'Hulst - OT Coeur de Flandre
ノートル・ダム・ド・ラ・クリプト教会 ©Isabelle D'Hulst - OT Coeur de Flandre

グランプラスの東側、坂を少し上がると、どっしりとしたノートル・ダム・ド・ラ・クリプト教会があります。戦争による被害などで、何度も増改築されてはいますが、その起源は10世紀と、歴史ある教会です。

カッセルの風車

カッセルの風車
©Isabelle D'Hulst - OT Coeur de Flandre

カッセルの魅力はいろいろありますが、忘れてはいけないのは、風車です。フランドル地方は、中世から粉ひき以外に、油絞りにも、風車を使っており、かつてはカッセルにも20以上の風車がありました。火災などによって、一度はそのすべてが失われましたが、1983年から、カッセルの丘の上に、再び風車が一台設置されています。

風車のある場所は、グランプラスから5分ほど北へ歩いた小高いところ。そのすぐふもとには、エスタミネ(Estaminet T’Kasteelhof)もあります。エスタミネというのは、この地方の言葉で、大衆レストランを指します。カジュアルで居心地のよい、にぎやかな食堂といったイメージのものが多く、郷土料理が供されます。

カッセルにある県立フランドル美術館の年間入場者数は50,000人。観光局を訪れる人の数は年間25,000人。『フランス人の好きな村』ナンバーワンに輝いたことで、おそらくその数はこれからさらに増えるでしょう。

フランスの観光都市リール(Lille)からカッセルは、車で約40分の距離。また、フランス国鉄も両駅を約40分でつないでいます。料金は2ユーロ。ただし、カッセル駅から村の中心までは2.6キロメートルほどあります。シャトルバスも出ていますが、数が少ないので、ご注意ください。

フランドル観光局:https://www.coeurdeflandre.fr/
カッセル:http://www.cassel.fr/
県立フランドル美術館(月曜定休):http://museedeflandre.lenord.fr/
オー・ボヌール・ド・ラ・ターブル:http://www.hautbonheurdelatable.com/
エスタミネ(Estaminet T’Kasteelhof):http://www.estaminets.fr/Estaminets/EstaminetConsulter.php?EstId=3

いかがでしたか。なだらかな緑の丘に、ぽつぽつと風車の立つフランドル地方の村カッセル。素朴でカジュアルな雰囲気を味わいに、ぜひ足を延ばしてみませんか。

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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