ドイツの世界遺産「ケルン大聖堂」の見どころと歩き方

公開日 : 2020年06月27日
最終更新 :
ヨーロッパの水運の大動脈であるライン川から見るケルン大聖堂 ©iStock
ヨーロッパの水運の大動脈であるライン川から見るケルン大聖堂 ©iStock

ケルンはドイツ西部に位置し、ライン川を利用した通商都市として古くから栄えた町です。ライン川の岸辺の近くにそびえ建つケルン大聖堂は、ゴシック様式のカテドラルとして世界最大級の大きさを誇ります。正面に立って塔を見上げたときの、覆いかぶさってくるような大迫力のスケール感をぜひ体験してみてください。

ケルン大聖堂とは

ケルン大聖堂とは
正面ファサードから見たケルン大聖堂 ©iStock

ケルン大聖堂の正式名称は、ザンクト・ペーター・ウント・マリア大聖堂(Dom St. Peter und Maria)といい、聖ペトロとマリアの大聖堂という意味です。

フランスのアミアン大聖堂の平面プランを模範とし、立体的にはドイツ的な垂直性を重視して、洗練されたゴシック建築となりました。ケルン大聖堂の大きな特徴でもある、天に向かって突き出た塔は157mの高さがあり、広角レンズでもかなり後ろまで下がらないと全貌を収めることができません。

トリーア大聖堂、マインツ大聖堂とあわせてドイツ三大大聖堂と称されますが、ケルン大聖堂はドイツで最も訪問者数が多い教会であり、さらに観光スポットとしてドイツ人に最も人気が高い、重要な大聖堂なのです。

ケルン大聖堂の歴史

ケルン大聖堂の歴史
ケルン大聖堂を中心に広がる大都市ケルン ©iStock

●建設期間は600年以上!
ケルンに初代の聖堂が建設された4世紀から、何度かの建て替えを経た1164年、「東方三博士の聖遺物」がミラノからケルンにもたらされました。このお宝を拝むため、ヨーロッパ各地から巡礼者が大挙して訪れるようになりました。

1248年の火災で大聖堂は消失し、すぐに大規模な計画による大聖堂の再建が始まりましたが、完成したのは1880年。実に632年もの長い年月がかかったのは、あまりの規模の大きさと、宗教改革による資金難のため、建設が中断された期間が何度かあったからです。

●大聖堂のステンドグラスの歴史
第2次世界大戦の空襲では、大きな被害を受けたものの外郭部分は残り、戦後に復旧されました。大きな窓を飾る壮麗なステンドグラスは、ケルン大聖堂の見どころのひとつですが、最も古いステンドグラスは、主祭壇の奥の北側窓を飾る「聖書の窓(Bibel-Fenster)」で、1260年頃の作品です。また、最も新しいステンドグラスは2007年作の「リヒターのステンドグラス(Richter-Fenster)」です。

●世界遺産登録から取り消しに?
ケルン大聖堂は1996年に世界遺産に登録されましたが、その後世界遺産から取り消されそうになったことがあります。高層ビル建設を含む周辺の再開発計画が持ち上がったためです。計画が実現すると、大聖堂を取り巻く都市景観が損なわれるとして、2004年に危機遺産リストに登録されたのです。その後、開発計画は修正され、危機リストからは除外されました。

ケルン大聖堂の見どころ

ケルン大聖堂の見どころ
見上げると、あまりの壮大なスケールに圧倒される ©iStock

●正面ファサードの扉口と塔

南塔への階段入口は大聖堂の外。地下に降りたところに入場券売り場がある
南塔への階段入口は大聖堂の外。地下に降りたところに入場券売り場がある
「ペーターの鐘」という名の南塔の大鐘
「ペーターの鐘」という名の南塔の大鐘

ケルン大聖堂の正面入口がある西側には、中央に3つの玄関扉と両端に塔があります。扉口上部を飾る繊細な彫刻の多くは19世紀のものです。

南塔(Südturm)には533段の階段で上れます(有料)。エレベーターはなく、ひたすら狭いらせん階段を登って行くと、高さ97.25mのところに展望台があり、ケルン市街やライン川の迫力ある眺望を楽しめます。また、途中には重さ24000kgの巨大な大鐘(Petersglocke)
を間近に見られます。


●身廊(Mittelschiff)

内陣に向かって連なる身廊の柱 ©iStock
内陣に向かって連なる身廊の柱 ©iStock

身廊とは聖堂の入口から祭壇へ続く中央通路のことで、ケルン大聖堂の身廊部の天井は高さ約43mもあります。天井を支えているのは、梁のように交差しているリブ・ヴォールトと尖塔アーチです。重力を分散させるゴシック様式の建築技術によって、大きなガラス窓を設けて、ステンドグラスが取り付けられるようになりました。


●南側側廊のバイエルン窓(Bayernfenster)

東方三博士の礼拝の場面が見事なバイエルン窓
東方三博士の礼拝の場面が見事なバイエルン窓

正面入口から入って右側の壁面を飾る色鮮やかな5枚のステンドグラスは、ひときわ目をひきます。1848年にバイエルン王ルートヴィヒ1世が寄贈したので、「バイエルン窓」の名があります。東方三博士の礼拝、精霊降臨、ピエタなどの場面が、華麗な色彩で展開しています。


●リヒターのステンドグラス(Richter-Fenster)

細やかな色彩の配置が印象的なリヒターのステンドグラス
細やかな色彩の配置が印象的なリヒターのステンドグラス

南側の翌廊を飾るモザイクのようなステンドグラスは、ドイツ人アーティストのゲルハルト・リヒターによって2007年に作られました。72色、11263枚のアンティークガラスが、現代アート風に配置されています。

大聖堂内のさまざまな美術品

大聖堂内のさまざまな美術品
まぶしく輝く黄金の聖棺は大聖堂きってのお宝 ©iStock

●東方三博士の聖棺(Drei Königenschrein)

大聖堂内部で見逃せないのが、中央祭壇の奥に置かれた黄金の聖棺。この中には1164年にケルンにもたらされた東方三博士の聖遺物(聖人の遺骨や遺品)が納められています。この聖遺物により巡礼者が急増し、巨大な大聖堂の建設が始まりました。


●大聖堂の絵(市の守護聖人の祭壇画)(Alter der Stadtpatrone)

聖母マリアの優美な美しさに目を奪われる
聖母マリアの優美な美しさに目を奪われる
クリスマスと断食期間は「受胎告知」の場面が現れる
クリスマスと断食期間は「受胎告知」の場面が現れる

中央祭壇に向かって右側にある祭壇画は、ケルンで活躍した画家シュテファン・ロホナーの1440年頃の作品。3面からなり、中央には東方三博士の礼拝、左右にはケルン市の守護聖人が描かれているので、「市の守護聖人の祭壇画」の名もあります。観音開きになっており、クリスマスと断食期間は左右の絵が閉じられて、裏面に描かれた受胎告知の場面が現れます。

●ゲロクロイツ(Gero-Kreuz)

黄金に輝く太陽に照らされたキリスト像
黄金に輝く太陽に照らされたキリスト像

中央祭壇に向かって左側、ケルン大聖堂のゲロ司教により寄進された木製の十字架像です。970年頃に製作され、木製で等身大の十字架像としてはヨーロッパ最古といわれます。像の背後の輝く太陽と大理石の祭壇は、1683年の作。

展示施設「宝物館」(Domschatzkammer)

展示施設「宝物館」(Domschatzkammer)
宝物館は中央駅から階段を上がってすぐ、大聖堂の北側入口の近く ©iStock

典礼用の金銀細工が施された聖具や聖遺物箱、彫像、祭衣などを所蔵しており、なかでも、「ペテロの杖」と「ペテロの鎖」「ゴシックの司教杖(推定1322年頃)」などが見どころです。ケルン大聖堂についてじっくり知りたい人は、見学してみてください。

ケルン大聖堂への行き方

ケルン大聖堂への行き方
ケルン大聖堂の前を走るドイツの超特急ICE

■フランクフルトからの行き方
フランクフルトから、特急ICE(インターシティーエクスプレス)利用で最短約1時間5分。ライン川沿いの眺めがいいコブレンツ経由のルートを取る場合は、約2時間25分。

基本情報

基本情報
ミサの時間は内部の見学はできない ©iStock
住所
Domkloster 4, 50667 Köln
アクセス
ケルン中央駅のメイン出入口を出て、左側の広い階段を上がるとすぐ。駅からすでに姿が見えているので迷うことはない。
開館時間
大聖堂:6:00~20:00 ミサがあるため観光客が入れる時間は月曜~土曜 10:00~17:00 日曜・祝日 13:00~16:00
大聖堂宝物館:10:00~18:00のみ公開
南塔:5~9月 9:00~18:00 3・4・10月 9:00~17:00 11~2月 9:00~16:00
※ミサやカーニバルのある期間は閉鎖または変更あり
入場料
大聖堂:無料、塔:€6、宝物館:€6、塔と宝物館のコンビチケット:€9

まとめ

まとめ
ライトアップされた夜の大聖堂は幻想的 ©iStock

大聖堂の見学後は、大聖堂前にあるカフェでひと休みしたり、ホーエンツォレルン橋を渡って、ライン川対岸に建つトリアングルビルの屋上から全景を眺めるのもおすすめです。また、おみやげに人気のオーデコロン(ケルンの水、という意味)を買ったり、夜はケルシュという地ビールを飲んで盛り上がるなど、さまざまな魅力がある町ケルンを楽しんでください。

≫≫≫ ドイツ旅行に役立つ記事一覧

TEXT: 鈴木眞弓(アルニカ)
PHOTO: 鈴木眞弓(アルニカ)、iStock

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL:  https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。