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知るほどに奥深い、屋久島に宿る自然の多様性とその魅力

2022年05月13日

有限な原生林風景が広がる白谷雲水峡。散策中にヤクシカに出合うことも

いつもの旅にSDGsの視点を――。SDGsとは持続可能な開発目標のこと。近年、観光分野でもSDGsを取り入れた、レスポンシブルツーリズム(環境への負荷を考え、責任を持って旅をする)という考え方が注目されています。世界自然遺産に登録された島々の自然や人々の暮らし・文化などを、この先、子どもや孫の世代まで残すには何をすべきなのか?今回は屋久島町公認ガイドの渡邊太郎さんに、屋久島の自然の魅力と自然に負荷をかけない観光の在り方についてお話を伺いました。

屋久島は日本列島の自然の縮図

山岳太郎ショップオーナー兼屋久島町公認ガイドの渡邊太郎さん

屋久島観光の拠点のひとつである安房(あんぼう)の中心部に、アウトドアショップ「山岳太郎」はあります。開店直後の時間に訪ねると、店先で何やら騒ぐ看板犬の「はるちゃん」の声を聞きつけて、店内から一人の男性が顔を見せました。彼の名は渡邊太郎さん。ショップオーナーであり、また屋久島町公認ガイドでもあります。

「ガイドをやりたくて屋久島に移住したんです」と渡邊さん。

学生時代に人づてに屋久島の存在を知り、勢いに身を任せて東京からやって来たのはいまから20年前のこと。島に暮らし、ネイチャーガイドの仕事に携わるなかでますます島の魅力を感じるようになったといいます。

屋久島の固有種で、標高1700m以上に自生するシャクナンガンピ

「屋久島の自然の特徴をひとつ挙げるとするならば、分かりやすいのはやはり垂直分布でしょうか」と渡邊さんは教えてくれました。
垂直分布とは、地表に対して垂直方向にみた植物や生物の分布のこと。九州最高峰・標高1936mの宮之浦岳を擁する屋久島は「洋上アルプス」と呼ばれる山の島。急峻な地形が作り出す高低差は、日本列島のほぼ全域をカバーする亜熱帯性から亜寒帯性までの気候の変化を生み、さまざまな植生が垂直方向に分布する希有な環境を作り出したのです。

「屋久島は地理的には亜熱帯性気候に属しますが、2000m級の山々は冬季には氷雪に覆われます。ガジュマルも高山植物も、照葉樹も針葉樹もある。縄文杉を通じて多くの観光客に来島いただくのはうれしいことではありますが、実はこの豊かな自然環境とそれに伴う特別な生態系こそが屋久島の最大の特徴であり、1993年に日本ではじめて世界自然遺産に登録された主たる要因なのです」

縄文杉だけではない、屋久島らしさを感じるスポット

標高1300mの山中に根を張る縄文杉。一度は目にしたい憧れの巨杉だ

屋久島といえば、屋久島の森の王様との異名をもつ縄文杉。推定樹齢2000年代〜7200年といわれ、現在確認されているなかでは島内最大の屋久杉です。登山口から往復で約10時間と本格的な山行となりますが、その生命力あふれる姿をひと目みようと訪れる観光客は後をたちません。渡邊さんが催行するガイドツアーもその約6割が縄文杉登山に集中するそうで、初来島の観光客に絞れば、そのほとんどが縄文杉登山を目指すといっても過言ではないほどの人気ぶりです。
しかしその一方で「豊かな自然環境とそれに伴う特別な生態系こそが屋久島の最大の特徴」であるならば、屋久島らしさを感じられるスポットはほかにもあるはず。渡邊さんに尋ねると「縄文杉の次に人気が高いのは白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)。でも僕の個人的なおすすめはヤクスギランドです」との答えが返ってきました。

ヤクスギランドは木道が整備され、気軽に散策を楽しめる

「白谷雲水峡はアニメーション映画『もののけ姫』の舞台のイメージの源となった苔むした原生的な森林や渓流を鑑賞でき、縄文杉登山の翌日に訪れる人も多い人気スポットですが、こと屋久杉をはじめとする針葉樹に関していえば、標高1000mとより高くに位置するヤクスギランドのほうが見応えはあります。苔だけでみてもヤクスギランドのほうがきれいなんじゃないかと思うくらいで、初心者でも楽しめる利便性も含めてその魅力がもっと伝わってほしいですね」

展望所から望む千尋の滝。巨大な一枚岩から滝が流れ落ちる

原生の森から視界を広げれば、さらに多彩な屋久島の自然がみえてきます。

「島の成り立ちを知るには千尋(せんぴろ)の滝がおすすめです。屋久島の地質はその約7割が花崗岩で、つまり岩盤の上にしがみつくように森が形成されています。大きさで比較すれば大川の滝といった名瀑もありますが、千尋の滝の周囲は土台の花崗岩が露出していて、『屋久島は岩でできている』ということが強く実感できるスポットといえます。
また登山であれば、僕はモッチョム岳が好きですね。標高944mの岩山ですが、まず山容がシンボリックでかっこいい。途中の森や沢もきれいで、巨杉もある。傾斜はきついのですが登り応えもあって達成感を味わえる山です。岳参りとよばれる山岳信仰の祠も山頂にあり、屋久島の魅力が凝縮していると僕は感じています」

島の90%が森林に覆われ、標高1000m以上の山は46座、河川は140を数える屋久島。人が生活したり足を踏み入れたりすることができるエリアは島全体から見ればごく一部にすぎません。私たちが想像する以上に、屋久島の自然は奥が深いのです。

自然を受け入れることがSDGsな旅の第一歩

手つかずの自然は学びの宝庫。じっくりと観察してみよう

縄文杉登山をはじめ、トレッキングコースは基本的に個人でも行くことが可能です。ではあえてガイドツアーに参加する利点はどこにあるのでしょうか?

「ガイドの一番の役割は安全管理。出発から帰着までお客さまが無事に目標を達成することをサポートする。それを大前提としたうえで、屋久島の魅力を知ってもらうためのプラスアルファを提供することがガイドの大切な仕事だと僕は考えています。お客さまが望む過ごし方は人それぞれですから、各人が求める居心地のよさに添うことはもちろんですが、それだけに留まらない新しい発見であったり気づきであったり、僕たちガイドと時間や空間をともにするなかで『自然ってそんな見方もあるんだ』というものを感じてもらえたらうれしいですね」

渡邊さん自身、屋久島で生活することで自然観にある変化が生まれたといいます。

「東京に帰省したときに感じるのですが、都会の街路樹もきれいな花をつけるんですよね。屋久島ほどのダイナミックさはないにせよ、都市部にも小さな自然はたくさんあるんです。観光客のみなさんも屋久島での体験をきっかけにそうした身近な自然に目を向けるようになることで、環境問題もより自分のこととして捉えられるのではないかと思います」

ペットボトルからマイボトルへ。一人ひとりができることを実践しよう

マイボトルを持ち歩いたり、樹木の根を傷つけないように歩いたり。屋久島で触れられる環境負荷を軽減する取り組みのなかには日々の生活で実践できるものも多くあります。渡辺さんはそうした行動のベースにあるべきは「自然を受け入れる気持ち」だと説きます。

「外来種を持ち込まないように靴の底を洗いましょうとか、あるいは野生動物には餌を与えないでくださいとか、僕たちがお伝えしていることってつまりは『いまある自然を受け入れて適度な距離感を保って楽しみましょう』ということなんです。屋久島はテーマパークでも動物園でもなく、そこにあるのは自然です。自分本位に行動しようとすれば、それはどこかで環境に負荷をかけることにつながるでしょう。動物が近寄ってくれなくても、雨が降って予定が変わっても、『それもまた自然』と楽しめる心の余裕を持つこと。そのマインドがあれば旅の楽しみ方も、環境に対する意識も自ずと変わってくると思うのです」

自然の摂理に従って長い時間をかけて作り出された生態系は、関わり方や振る舞い方ひとつで変容してしまうとても繊細なバランスで成り立っています。そして忘れてはいけないのは私たち自身もそうした自然の大きなシステムの一部であるということ。SDGsの視座を携えた屋久島への旅は、私たちが未来に受け継ぐべき大切なものとは何かを考える絶好の機会となるはずです。

ショップではアウトドア用品のレンタルも行っている

■山岳太郎ショップ
・住所: 屋久島町安房410-8
・TEL:  0997-49-7112(受付 9:00~18:30)
・営業時間: 9:00~18:30
・URL: https://www.andes-k.co.jp/(山岳太郎ショップ)
     https://www.sangakutaro.com/(屋久島ガイドオフィス 山岳太郎)

※当記事は、2022年4月2日現在のものです

ディレクション: 曽我 将良
編集: 株式会社アトール
協力: 公益社団法人鹿児島県観光連盟
©iStock

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