鹿児島の世界遺産である屋久島、奄美大島、徳之島。それぞれの島の見どころは?

公開日 : 2022年05月13日
最終更新 :
世界遺産屋久島の森を流れる清流 ©Daikegoro / PIXTA(ピクスタ)
世界遺産屋久島の森を流れる清流 ©Daikegoro / PIXTA(ピクスタ)

鹿児島県は28もの有人島を持つ、全国でも有数の離島の多い島。約600kmという広大な県域に点在する島々は、温帯から亜熱帯まで気候も違えば、自然や文化のあり方もさまざま。今回はそのなかでも世界自然遺産に登録されている、屋久島、奄美大島、徳之島の見どころをご紹介します。

年間降水量日本一。“月に35日雨が降る”水に恵まれた屋久島

年間降水量日本一。“月に35日雨が降る”水に恵まれた屋久島
豊富な雨が多様な植物を育む屋久島。600種類以上のコケ類が生息する ©Daikegoro / PIXTA(ピクスタ)<br />Daikegoro / PIXTA(ピクスタ)

大隈半島から約60km南に浮かぶ屋久島。周囲130km、車ならおよそ3時間で1周できる小さな島に約1万2000人が暮らしています。島の中央には九州最高峰となる標高1936mの宮之浦岳をはじめ、1800m級の山々が連なり、海から急峻な山々が立ち上がる様子から洋上のアルプスと呼ばれています

屋久島の自然において特に注目されているのが特異な生態系。海抜0mから2000mの間に、亜熱帯気候から北海道並みの亜寒帯までの気候が見られます。そこに亜熱帯や冷温帯で生育する植物約1900種が生息。このような垂直分布は世界でここだけ。その様子は日本列島の縮図とも言われています。

屋久島は雨の多さでも知られています。年間降水量は平地で約4500mm(東京は約1600mm)、山間部にいたっては8000~10000mmという、驚くべき多雨。その多さから、月に35日雨が降ると表現されることも。雨は無数の谷川を作りだし、島に豊富な水をもたらします。

屋久島のエコツアーのハイライト縄文杉。森の王者のような風格 ©primeNumber99991 / PIXTA(ピクスタ)
屋久島のエコツアーのハイライト縄文杉。森の王者のような風格 ©primeNumber99991 / PIXTA(ピクスタ)

屋久島の自然を知るには、森のなかを歩いてみるのがいちばん。屋久杉という名称を聞いたことがあるかもしれませんが、屋久杉と呼ばれるのは樹齢千年以上の高齢杉。屋久島では樹齢数百年の杉でもまだ若木とされ、小杉と呼んでいるそうです。
その屋久杉を代表するのが縄文杉。諸説あるものの樹齢は2000年台~7200年とされ、現在確認されている屋久杉のなかでも最高齢の老大木です。厳しい自然環境にさらされながらも大地に根を張り枝を広げる、高さおよそ25m、周囲16mの巨木は人を圧倒する神々しさ。一度は会いに行きたい森の王者です。

推定樹齢2000年の切り株、ウィルソン株 ©zzz555zzz / PIXTA(ピクスタ)
推定樹齢2000年の切り株、ウィルソン株 ©zzz555zzz / PIXTA(ピクスタ)

とはいえ、縄文杉を見るのはそう簡単ではありません。縄文杉への道は、本格的な山道を含む往復10時間のトレッキング。雨具や携帯トイレといった登山装備も必携です。そんな苦労を乗り越えて出会う縄文杉だからこそ感動もひとしお。縄文杉にいたるまでの道中にも、恋が叶うと言われるウィルソン株や樹齢3000年の大王杉など見どころが豊富です。

ヤクスギランドには遊歩道が整備され、気軽に散策できる ©K / PIXTA(ピクスタ)
ヤクスギランドには遊歩道が整備され、気軽に散策できる ©K / PIXTA(ピクスタ)

そこまでハードなトレッキングは無理…と思われた方もご安心を。30分や50分といった気軽なトレッキングコースが設定された「ヤクスギランド」や、映画『もののけ姫』のモチーフとなったといわれる「白谷雲水峡」など、体力に自信がない方でも、屋久島の自然に触れられるスポットが点在しています。

個人でも訪れることはできますが、島の自然環境や歴史、文化などさまざまな側面から島の成り立ちを解説してくれるエコツアーガイドと一緒に巡るのがおすすめ。固有種など植物についても詳しく教えてもらえるので、一層知識が深まることでしょう。

生態系の多様性と伝統文化に触れる奄美大島

生態系の多様性と伝統文化に触れる奄美大島
森も海も奄美大島の自然環境は実に豊かだ

鹿児島市から南へ約380kmに位置する奄美大島は、周囲約461kmの島に約6万人が暮らす奄美群島最大の島です。2021年7月に、徳之島・沖縄本島北部・西表島とともに 世界自然遺産に登録されました。

奄美大島の自然の特徴は生物の多様性。大昔に大陸から分離したときに生き残った動植物が固有の進化を遂げ、独自の生態系を育みました。アマミノクロウサギやルリカケスはその代表的存在。どちらも奄美大島と徳之島だけに生息する固有種です。

亜熱帯の植物が茂る森は恐竜がでてきそうな雰囲気
亜熱帯の植物が茂る森は恐竜がでてきそうな雰囲気

そんな奄美の自然の豊かさを感じに、亜熱帯の原生林が茂る金作原(きんさくばる)を訪れてみましょう。山に近づくにつれ道路は未舗装になり、砂利道をガタガタと進みます。かつては自由に入山できましたが、観光客が増え植生の破壊が懸念されることから、2019年より入山を規制。奄美市では認定エコツアーガイドの同行を推奨しています。

山道には両脇にたくさんの植物が茂り、ときおり鳥のさえずりも聞こえます。ガイドがその名前や生態などを教えてくれるので、面白さも倍増。入場できる人数には限りがあるので、ハイシーズンは早めに予約しましょう。

さまざまな生物のすみか、マングローブの森をカヌーで探検
さまざまな生物のすみか、マングローブの森をカヌーで探検

西表島に次ぐ、国内第2位の広さを誇るマングローブの森を探検するのものおすすめ。マングローブの森があるのは、奄美大島中部の住用町。町全体の94%を山林が占める自然豊かなエリアです。流域には固有種のリュウキュウアユが暮らしています。本土のアユに比べて小さめで、背びれの形が若干違うリュウキュウアユは、沖縄ではすでに絶滅しており、現在は奄美大島でしか見られません。マングローブの森は、ぜひカヌーで探検してみましょう。「黒潮の森マングローブパーク」では体力に自信のない方や小さな子供、年配の方でも安心の、1時間ほどのカヌーツアーを開催しています。

■黒潮の森マングローブパーク
・住所: 奄美市住用町石原478
・TEL:  0997-56-3355
・営業時間: 9:30~18:00 不定休
・料金: カヌー体験大人2000円、小・中学生1800円
・URL: https://www.mangrovepark.com/

奄美の伝統文化、大島紬。複雑な柄を織り上げる
奄美の伝統文化、大島紬。複雑な柄を織り上げる

島独自のカルチャーも奄美大島の旅の楽しみです。まずは世界三大織物のひとつに数えられる大島紬にふれてみましょう。
大島紬発祥の地、龍郷町にある大島紬村では大島紬の製造工程を見学したり、機織りや泥染めを体験することができます。しなやかで軽く丈夫な大島紬はかつては日常着として愛用されてきました。その製造工程は実に複雑で緻密。約1カ月かけてシャリンバイ染め80回、泥染め5回を繰り返した糸を、織り機で織っていきます。1反織り上げるのにかかる日数はおよそ40~50日。気の遠くなるような手間をかけて作られる大島紬は、まさに奄美が世界に誇る伝統工芸。島を訪れたらぜひ触れてみてください。

名瀬の民謡居酒屋「吟亭」で島唄ライブを楽しもう
名瀬の民謡居酒屋「吟亭」で島唄ライブを楽しもう

奄美といえば島唄も忘れてはなりません。島の各集落(シマ)には古くから唄い継がれた唄があります。唄われるのは自然や日々の生活から生じる想い。男女が心を伝え合う「唄遊び」などの伝統もあります。ぜひ名瀬の民謡酒場へ行き、島唄を生で聴いてみましょう。郷土料理を食べたあとは、三線の伴奏でライブのスタート。最後はお客さんも参加して、みんなで唄い踊ります。

■吟亭
・住所: 奄美市名瀬金久町6-2
・TEL:  0997-52-9646
・営業時間: 18:00〜22:00 不定休

奄美を代表する郷土料理鶏飯。たっぷりの鶏スープをかけて召し上がれ
奄美を代表する郷土料理鶏飯。たっぷりの鶏スープをかけて召し上がれ

奄美大島を訪れたらぜひ食べたいのが鶏飯。ご飯に鶏肉やネギ、錦糸玉子などの具材を乗せて、鶏のスープをかけていただく、奄美を代表する郷土料理です。もともとは江戸時代に藩の役人をもてなす高級料理として誕生。昭和21年に「元祖鶏飯みなとや」の女将が現在のスタイルを生み出し、各地に広まっていったと言われています。
旨みたっぷりのダシをたっぷりとかけていただく鶏飯は、まさに奄美のソウルフード。滋味溢れるやさしい味わいで、何度食べても飽きません。

■元祖鶏飯みなとや
・住所: 奄美市笠利町外金久81
・TEL:  0997-63-0023
・営業時間: 11:30〜売り切れ次第終了 不定休
・URL: https://minatoya.amamin.jp/

子宝と長寿の島、徳之島で結の精神にふれる

子宝と長寿の島、徳之島で結の精神にふれる
浜辺を散歩する闘牛。闘いのときとは異なるのどかな光景だ

鹿児島市から南へ約468km、周囲およそ89kmの徳之島。徳之島町、伊仙町、天城町の3町からなり、およそ2万2000人が暮らしています。サトウキビや果樹栽培などの農業や、漁業などが主要産業。今なお素朴な空気が残る島の一部にはアマミノクロウサギをはじめとした貴重な生態系が残り、2021年に世界遺産に登録されました。

徳之島といえば、闘牛が盛んな島としても有名です。闘牛は「なくさみ」と呼ばれ、砂糖地獄と呼ばれた苦しい年貢の取り立てに苦しめられていた島民にとって唯一の娯楽でした。現在でも年に数回大きな大会が開催され、島内外から3000名を超えるファンが詰めかけおおいに盛り上がります。

年に数回闘牛の大会が催される「徳之島なくさみ館」 ©深千 / PIXTA(ピクスタ)
年に数回闘牛の大会が催される「徳之島なくさみ館」 ©深千 / PIXTA(ピクスタ)

闘牛のことが知りたければ「徳之島なくさみ館」へ。なくさみ館は島で最大規模を誇る闘牛場で、闘牛に関する資料が展示された「闘牛資料館」が併設。闘牛の歴史や牛の角の種類、勝負の決まり手など、闘牛について深く知ることができます。

■徳之島なくさみ館(闘牛資料館)
・住所: 伊仙町目手久626
・TEL:  0997-86-2093
・営業時間: 8:30〜17:15 不定休
・入場料: 200円

金見集落。豊かな自然と集落の近さも徳之島の特徴だ
金見集落。豊かな自然と集落の近さも徳之島の特徴だ

長寿と子宝の島としても有名な徳之島。古くから泉重千代さん、本郷かまとさんに代表される100歳を超す元気なお年寄りが多いことで知られています。また、平成28年に発表された全国市町村の合計特殊出生率では、伊仙町が全国1位の2.81、徳之島町、天城町もトップ10に入る、子供とお年寄りが元気な島なのです。長寿と出生率の高さの理由については、さまざまな説がありますが、ひとつには温暖な気候にあると言われています。

タンパク質や野菜、海藻などバランスの良い食材も長寿の秘訣
タンパク質や野菜、海藻などバランスの良い食材も長寿の秘訣

また、農業や漁業などの一次産業が盛んで、自然のなかで体を動かすこと、黒糖をはじめミネラル豊富な体によい食材が多いこと、闘牛や島唄などを通じて、人と人が関わりあい和気あいあいと過ごす風土なども長寿の秘訣といわれています。

出生率が高い理由については、地域で助け合う習慣が根付いていることが挙げられます。親や兄弟、近所の人など子育てを支援してくれる人がいるため、子どもが多くても育てていける、という島の人の声も。お互いの助け合う心を、島の人たちは結の精神と呼んでおり、それこそが徳之島の魅力なのです。

民泊「幸ちゃん家」。旅人でも温かな島の暮らしが体験できる
民泊「幸ちゃん家」。旅人でも温かな島の暮らしが体験できる

旅行客が結の精神を感じたいなら、いちばん簡単なのは島の生活を体験できる民泊に滞在すること。宿のお父さんやお母さんの温かなもてなしに、島を包み込む優しさを感じることができるでしょう。夜は黒糖焼酎片手に素朴な郷土料理を味わって。農業や漁業体験などを行っている民泊もあり、島暮らしを体験してみるのもおすすめです。

徳之島の風光明媚な見所を巡る

徳之島の風光明媚な見所を巡る
犬の門蓋のメガネ岩。自然が生み出した造形に驚かされる ©norinori303 / PIXTA(ピクスタ)

徳之島はダイナミックな地形や独特の風景も見所です。島を代表する絶景スポットといえば犬の門蓋(いんのじょうふた)。東シナ海に面する海岸線に広がる断崖・奇岩で、風や雨が長い年月をかけて作り上げた自然の造形に圧倒されます。駐車場から遊歩道を下ったところにあるのが「メガネ岩」。隆起珊瑚が削られてできた2つの空洞は、確かにメガネのよう。

神秘的な雰囲気がただよう、金見岬のソテツトンネル ©はしぞう / PIXTA(ピクスタ)
神秘的な雰囲気がただよう、金見岬のソテツトンネル ©はしぞう / PIXTA(ピクスタ)

島北東部の金見(かなみ)集落にある樹齢約300年~350年のソテツが茂るトンネル。もともとは、北風の暴風対策のために植えられたソテツが、長い歳月をかけて自然のアーチになりました。トンネルの長さは約250m。トンネルを抜けると太平洋と東シナ海を見渡す金見崎展望所があります。

ゴツゴツとした花崗岩が連なるムシロ瀬 ©くみこう / PIXTA(ピクスタ)
ゴツゴツとした花崗岩が連なるムシロ瀬 ©くみこう / PIXTA(ピクスタ)

巨岩が連なる豪快な景観が広がるムシロ瀬。隆起珊瑚礁や琉球石灰岩が多い島において、花崗岩の奇岩が織りなす風景は別世界のような雰囲気です。冬場は打ち付ける波がダイナミックなしぶきをあげて迫力満点。周辺には大島紬の染色に使われるシャリンバイが自生しています。

それぞれに異なる魅力を持つ屋久島、奄美大島、徳之島。気になる島に出かけてみてはいかがでしょうか。

※当記事は、2022年5月13日現在のものです

ディレクション: 曽我 将良
編集: 株式会社アトール
協力: 公益社団法人鹿児島県観光連盟

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筆者

地球の歩き方観光マーケティング事業部

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