累計650万本販売で映画化も発表!『ゴーストオブツシマ(Ghost of Tsushima)』の舞台・対馬ってどんな島?

公開日 : 2021年04月05日
最終更新 :

元軍を中心とした数万の兵が日本を攻めるべく殺到した“元寇”。鎌倉幕府は苦戦するが、“神風”の語源ともなった暴風雨が二度の襲来の両方で元軍の船を襲い、これを潰走させた。学校では“文永の役”“弘安の役”という単語とともに、苦戦しつつも日本が辛くも勝利した戦いとして記憶している方が多いかもしれません。しかし、すべての戦争には、勝敗以前のはじめの一発があります。元寇においては元軍の襲来を最初に受けたのは、対馬でした。

日本版『300(スリーハンドレッド)』、圧倒的な戦力差の中、戦い抜いた対馬武士

日本版『300(スリーハンドレッド)』、圧倒的な戦力差の中、戦い抜いた対馬武士
この日は波が穏やかだった小茂田浜。ここから見える海が元軍で埋め尽くされていたのかも…と思うと、風景が少し違って見えてくる

文永11年(1274年)、高麗の合浦(現在の韓国・馬山)を出発した元・漢・高麗連合軍(軍勢は2万5千とも4万とも)は対馬の南部・小茂田浜を来襲。これに対して当時の対馬守護代・宗助国(そう・すけくに)は80余騎が率いる総勢400名で迎え撃ちました。圧倒的戦力差のなか、助国の軍は1日持たずに完敗、助国は息子共々討ち死にしてしまいます。

戦争の歴史のなかでは、こうした圧倒的戦力差が生まれることはしばしばあります。映画『300(スリーハンドレッド)』では押し寄せるペルシャ軍(映画の中では100万人とうたわれていました。)にたった300人で立ち向かったスパルタ軍の激闘が描かれますが、対馬沖を埋め尽くす900隻とも言われる船団を見た武士たちは戦慄したことでしょう。『ゴーストオブツシマ』では襲来した元軍にひとり立ち向かう主人公の戦いが描かれています。

海路の要衝ゆえの苦闘

海路の要衝ゆえの苦闘
殿崎にある日露慰霊の碑。潰走し、この地に流れ着いたロシア兵143名を対馬の人々は介抱した。戦没者の人数差が両国の歴史を左右するほどの一戦だったことをうなずかせるが、近くには対馬の住人がロシア兵に水を飲ませた井戸などが普通に残っており、海戦後のエピソードを記したモニュメントなどもある。教科書では触れることのない当時の時代性を感じさせるエピソードが読み取れる史跡も多い

福岡から120キロと少し、韓国からは約50キロと、むしろ韓国との距離が近い対馬は、日本と大陸との文化のかけ橋であるとともに戦いの最前線でもありました。
豊臣秀吉の朝鮮出兵においては対馬を治めていた宗家が(大陸との交易の窓口を担っていたのに)戦いの先導役を命じられます(そしてその後、徳川幕府に代わってからは和平交渉も任される…会社とかで一番やりたくないマッチポンプ状態…)。

日露戦争においては対馬沖でロシアのバルチック艦隊と東郷平八郎率いる連合艦隊が激突。日本海軍は大勝します。当時両軍が激突した際の砲撃音は島に住む人々にも聞こえたといいます。
この戦いは日本語では日本海海戦で通っていますが、海外では「The Battle of Tsushima(対馬の戦い)」という名の方が一般的であり、海外の方が『ゴーストオブツシマ』以外で対馬を知る入口にもなっています。このように、古くは白村江の戦い(金田城跡は今後レポートします)、鎌倉時代の元寇、安土桃山時代の朝鮮出兵、明治の日露戦争と対馬は時代の要所で歴史の舞台になってきました。

各時代の史跡に手軽に触れられる島の魅力

各時代の史跡に手軽に触れられる島の魅力
厳原港を見下ろせる清水山城址。一の丸から三の丸などに見どころを説明した案内が置かれてあるので、朝の散歩&山城の縄張り見学デビューにいかがでしょうか

前置きが長くなってしまいましたが、対馬の魅力の1つにはこれらの様々な時代の史跡に一度に触れられるところにあると思います。元寇襲来の地に建つ小茂田浜神社には元寇時の状況が垣間見える案内版があるかと思えば、日露戦争当時の砲弾が無造作に置かれていたりします。

また、島の玄関口の1つの厳原町には、新設中の博物館の裏から30分歩くと、豊臣秀吉が朝鮮出兵時に築かせた清水山城の遺構にたどり着きます。

ワーケーションの穴場候補として…

ワーケーションの穴場候補として…
右上の刺身はアナゴです。刺身を初めて食べました。海路の要衝だった対馬ですが、基本的には飛行機でのアクセスをおススメしますが、私は次回ぜひフェリーなどの海路で島に入りたいです

対馬と聞くと、韓国人観光客の多さを想起する方もいるかもしれません。コロナ以前は、3万人の島民に対して年間約40万人という韓国人の方が訪れていたということで、いわゆるオーバーツーリズム状態だったことは想像に難くありません。
取材時点では韓国からの玄関口である比田勝の国際ターミナル発着便は全便運休となっており、外国人観光客は皆無でした。人が行き来することで文化を醸成してきた対馬にあって、今回のコロナ禍は(他の日本の各地とまったく同じように)生活様式や物事の価値観を変えるターニングポイントとなるのかもしれません。

観光客が少なく、島の魅力をゆっくり堪能できるこの状況下だからこそ、対馬の史跡や食文化、そしてそこに住む人々から感じることは多いはずです。海の隘路がはぐくんだアナゴやイカ、サバ、ヒラス(ヒラマサ)などの豊かな海の幸や、島ならではの特色ある名産を多く抱える対馬は、旅やワーケーションの穴場となる可能性を秘めています。(私は「これ、都市圏から来たら毎食トクした気分になるやつだ」と感じていました。)

聖地巡礼ファンのみならず、歴史好きの方、離島好きの方、旅に出られるようになった際の目的地として、対馬、どうでしょう? 仕事も観光もおいしい食事ではかどりますよ。

「地球の歩き方」島旅編集部では、対馬を定期的に訪れ、島の魅力を伝える情報を発信していきます。

<参考リンク>
・URL: playstation.eng.mg/cd62f(「PlayStation.Blog」『Ghost of Tsushima』映画化決定のお知らせ)
・URL: https://www.tsushima-net.org/(対馬観光物産協会)

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※当記事は、2021年4月2日現在のものです

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

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