徹底解説! グランドキャニオン国立公園で見逃せないメアリー・コルターの歴史建造物

公開日 : 2019年09月17日
最終更新 :
グランドキャニオン国立公園リムトレイルからの眺め
グランドキャニオン国立公園リムトレイルからの眺め

2019年に制定100周年を迎えたグランドキャニオン国立公園。世界遺産にも登録され、年間500万人以上が訪れるこの国立公園は、絶景ポイントが星の数ほどあります。その絶景にアクセントを加えているのが建築家、メアリー・コルターの手による建築物です。メアリー・コルターの作った建物を通して、グランドキャニオン国立公園のひと味違う楽しみ方をお伝えします。

メアリー・コルターがグランドキャニオンに作った4つの建物

メアリー・コルターがグランドキャニオンに作った4つの建物
グランドキャニオン国立公園ハーミッツレストの入り口

メアリー・コルターは、1900年代前半、まだアメリカ国内に女性の建築家が22人しかいない時代に活躍した女性建築家です。グランドキャニオンが国立公園になる前から観光地としてプロモーションを進めていたフレッド・ハーヴィ社専属の建築家として、サウスリムにホテルや休憩所、展望台などを設計しました。

グランドキャニオンから受けたインスピレーションをベースに、ネイティブ・アメリカンの文化からヒントを得て、さまざまな自然素材を使って作られた建物はどれもまわりの景観にさらっとまざりあうように作られているのが特徴です。

メアリー・コルターが設計した建物のうちアメリカ合衆国国定歴史建造物(National Historic Landmark)に登録されている4つの建物、ホピハウス、ルックアウトスタジオ、ハーミッツレスト、ウォッチタワーを紹介します。

ホピハウス(Hopi House)は100年以上続くネイティブアメリカンのギフトショップ

ホピハウス(Hopi House)は100年以上続くネイティブアメリカンのギフトショップ
グランドキャニオン国立公園ホピハウス

メアリー・コルターがグランドキャニオンで最初に手掛けた建築物が、ホピハウス(Hopi House)です。1905年にオープンしてから100年以上の間、ネイティブアメリカンの工芸品を売るギフトショップとして使われています。

グランドキャニオン国立公園ホピハウス
グランドキャニオン国立公園ホピハウス

ホピハウスは、エルトバホテル(El Tovar Hotel)の隣にあります。あざやかな赤褐色の建物は、オールドオライビで見られるホピ族の家をお手本にしたスタイルです。
※オールドオライビとは、アリゾナ州のナバホ郡にあるホピ族の村で、今でも人が住み続けているアメリカでもっとも古い集落です。

グランドキャニオン国立公園ホピハウス
グランドキャニオン国立公園ホピハウス

日干しレンガが積まれた外壁、わらぶきの天井や室内のしっくい壁などは伝統的なホピ建築の特徴。実際のホピ族の家は入り口が屋根にあるのですが、ホピハウスではお客さんが入りやすいように出入口は地上に作られました。

グランドキャニオン国立公園ホピハウス
グランドキャニオン国立公園ホピハウス

ここにはネイティブアメリカン手作りの質の高い工芸品がぎっしり。インディアンジュエリーにナバホ・ラグ、ホピ族のカチナドールやズニ族の陶器など、おみやげ屋というよりは博物館の展示を見ているような楽しさです。

グランドキャニオン国立公園ホピハウス
グランドキャニオン国立公園ホピハウス

ところで、隣のエルトバホテルも同じ年にオープンしているのですが、こちらはスイスのシャレー(山小屋)スタイルを取り入れたしゃれた外観。メアリー・コルターはエルトバホテルの設計はしていませんが、インテリアデザインには携わっています。

グランドキャニオン国立公園エルトバホテル
グランドキャニオン国立公園エルトバホテル

ヨーロッパ風のエルトバホテルと素朴なタイルのホピハウスのコントラストは意図的に作られたのだとか。当時、エルトバホテルに宿泊したお客さんたちは、ホピハウスに立ち寄って、アメリカ南西部のエキゾチックな文化に多いに魅かれたようです。

峡谷を見下ろすルックアウト・スタジオ(Lookout Studio)

峡谷を見下ろすルックアウト・スタジオ(Lookout Studio)
グランドキャニオン国立公園ルックアウト・スタジオ

ブライトエンジェルの展望台から左手を見ると、切り立った崖っぷちに立つ小さな建物が見えます。これがルックアウト・スタジオ(Lookout Studio)。ブライトエンジェルから歩いて5分ほどのところにあります。

グランドキャニオン国立公園ルックアウト・スタジオ
グランドキャニオン国立公園ルックアウト・スタジオ

1914年に建てられたこの建物は、プエブロ(ネイティブアメリカンの集落)の住まいをデザインに取り入れた展望台スポット。

グランドキャニオン国立公園ルックアウト・スタジオ
グランドキャニオン国立公園ルックアウト・スタジオ

メアリー・コルターはこの建物が眼下に広がる峡谷の風景の邪魔にならず、景色の一部になるようにと考えました。そのもくろみ通り、石の壁や平らな屋根、丸太の柱などが使われたこのスタジオは遠くから見るとまるで崖の一部のように見えるのです。

グランドキャニオン国立公園ルックアウト・スタジオ
グランドキャニオン国立公園ルックアウト・スタジオ

1階の展望台のほか2階にも丸太を組み合わせて作られた展望テラスがあり、望遠鏡も置かれています。

グランドキャニオン国立公園ルックアウト・スタジオ
グランドキャニオン国立公園ルックアウト・スタジオ

室内はギフトショップになっていて、Tシャツやキャップのほか、写真やポストカードの種類が豊富に取り揃えられています。

ひっそりとたたずむハーミッツレスト(Hermit's Rest)

ひっそりとたたずむハーミッツレスト(Hermit's Rest)
グランドキャニオン国立公園ハーミッツレスト

ホピハウスやルックアウトスタジオのあるグランドキャニオンビレッジから、西へ向かってリム沿いを走るのがハーミットロード(Hermit Road)。11キロメートルの間に絶景ポイントが9ヵ所もあるシーニックルートです。このルートの終点にあるのが、ハーミッツレスト(Hermit's Rest)です。

ここは、舗装道路でアクセスできるグランドキャニオン・サウスリムの最西端でもあります。

グランドキャニオン国立公園ハーミッツレスト
グランドキャニオン国立公園ハーミッツレスト

ハーミッツレストは、ハーミットロードを馬車で移動する観光客のための休憩所として1914年に作られたものです。今もギフトショップやスナックスタンドがあります。

グランドキャニオン国立公園ハーミッツレスト
グランドキャニオン国立公園ハーミッツレスト

ここでは、メアリー・コルターは、ハーミット(隠とん者)がひっそりと暮らすような家をイメージしてデザインしました。

確かに入り口から歩いてくると、小高い土の山に隠れるように石造りの建物がたたずんでいます。実際1800年代半ばのゴールドラッシュ当時、ここから下った谷底に一攫千金を目指した探鉱者が住んでいたそうです。

グランドキャニオン国立公園ハーミッツレスト
グランドキャニオン国立公園ハーミッツレスト

建物の中に一歩入ると、ドームのような形をした巨大な床の間とアーチ型の暖炉が迎えてくれます。ハーミッツレストは、ほかのビューポイントに比べると込み具合がそれほどでもないので、落ち着いて景色を楽しめます。

グランドキャニオン国立公園ハーミッツレスト
グランドキャニオン国立公園ハーミッツレスト

ハーミッツロードは、冬期以外は、国立公園内の無料シャトルバスとXanterra社催行のツアーバスのほか自転車、徒歩のみで入れます。冬期(12月、1月、2月)はシャトルバスの運行がなくなる代わりに、自家用車でも入っていくことができます。

まるで古代プエブロの見張り塔? デザートビュー ウォッチタワー(The Desert View Watchtower)

まるで古代プエブロの見張り塔? デザートビュー ウォッチタワー(The Desert View Watchtower)
グランドキャニオン国立公園デザートビュー ウォッチタワー

ビジターセンターから東へ向かってリム沿いを走るのが、デザートビュードライブ(Desert View Drive)。約40キロメートルの間に6ヵ所の絶景ポイントがありますが、その最後のポイントです。つまり東の端にあるのが、デザートビューポイントのウォッチタワー(Watchtower)です。

グランドキャニオン国立公園デザートビュー ウォッチタワー
グランドキャニオン国立公園デザートビュー ウォッチタワー

まるでネイティブインディアンの遺跡のようにも見えますが、そうではありません。

フォーコーナーズ地域(ユタ、コロラド、ニューメキシコ、アリゾナの4つの州の境界線が1ヵ所で交わるエリア)で見つかった古代プエブロ(アナサジ族)の見張り塔をイメージして1932年に作られたものです。コンクリートの土台の上に鉄骨が組まれた頑丈な作りの塔です。

グランドキャニオン国立公園デザートビュー ウォッチタワー
グランドキャニオン国立公園デザートビュー ウォッチタワー

ここでもメアリー・コルターのこだわりがみられます。長い年月の間に風化したグランドキャニオンの岩肌にすっとなじませるために、石はあえて切ったり加工したりせず、そのまま使ったのだそうです。また古代遺跡のような雰囲気を醸し出すために、塔の根元の部分は岩が無造作にごろごろと積み上げてあります。

グランドキャニオン国立公園デザートビュー ウォッチタワー
グランドキャニオン国立公園デザートビュー ウォッチタワー

円筒形のタワーは、高さ約21メートル、3階建てです。1階は、大きな窓からグランドキャニオンを一望できるほか、ビジターセンターとブックストアが入っています。

グランドキャニオン国立公園デザートビュー ウォッチタワー
グランドキャニオン国立公園デザートビュー ウォッチタワー

2階のホピルームで見られる先史時代の絵文字やペトログリフのような壁画は、ホピのアーティストフランク・カボティ(Frank Kabotie)によるもの。ちなみに最上階の展望デッキまでは、85段の階段があります。

グランドキャニオン国立公園デザートビュー ウォッチタワー
グランドキャニオン国立公園デザートビュー ウォッチタワー

屋外の展望デッキからぐるりと見渡せば、レイクパウエルから流れてきたコロラド川が大きく曲がって西へ向かっているのがはっきりと見えます。

壮大なキャニオンの風景に溶け込むメアリー・コルターの建築物

壮大なキャニオンの風景に溶け込むメアリー・コルターの建築物
グランドキャニオン国立公園ブライトエンジェルロッジ

いかがでしたか。メアリー・コルターの作ったグランドキャニオンの建物のうち歴史建造物に登録されている4ヵ所を紹介しました。

これら以外にも、ブライトエンジェルロッジ(Bright Angel Lodge)や谷底にあるファントムランチ(Phantom Ranch)なども彼女の設計によるものです。グランドキャニオン国立公園に来たら、大自然の風景に溶け込んだこれらの美しい建物を絶景ともに味わってみてください。

筆者

アメリカ・ネバダ州特派員

石川 葉子

ラスベガスに来て20年ちょっと。ローカルツアーオペレーター出身のフリーランスライターです。

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