緑豊かな香港の茘枝窩へプチトリップ!300年の歴史をもつ客家の村を散策しよう

公開日 : 2022年03月24日
最終更新 :
ユネスコより「2020年持続可能な開発のための特別表彰」受賞
ユネスコより「2020年持続可能な開発のための特別表彰」受賞

香港の「荔枝窩(ライチーウォ)」というエリアを知っていますか?中国本土に近い新界地区(ニューテリトリー)に位置し、そこには300年の歴史をもつ客家(ハッカ)の村があります。村の周りには風水林やマングローブの森があり、緑豊かな場所としても魅力。都心とは全く異なる表情を持つこの村をご案内しましょう。

訪れる前に知っておきたい「客家」とは?

訪れる前に知っておきたい「客家」とは?
壁で囲まれた客家の村

「荔枝窩」を案内する前に、まずは客家についての説明を。客家とは、中国漢民族の一支流であり客家語を話す人々のこと。かつて戦国の時代に、戦火を逃れるため、南への移動を繰り返してきました。「客家」とは「よそ者」という意味で、かつて移住先で先住者からそう呼ばれ続け、次第に定着したといわれています。客家の人々は主に広東省・福建省・江西省などの山間部に居を構え、ここ荔枝窩はその移住先の一つなのです。

客家村の特徴「圍」と「風水林」

客家村の特徴「圍」と「風水林」
村の中にある「荔枝窩文化館」では客家の農具などを展示

荔枝窩の客家村の歴史は香港で最も古く、およそ300年に上ります。歴史の長さに対し保存状態が良いのも特徴です。以前は1,000人を超える人々が暮らしていましたが、1960年より人口は減少の一途をたどり始めました。しかし、「このまま村を衰退させるべきではない!」と、歴史と文化を守る活動が始まり、農家では米や野菜の栽培や牛の放牧を再開、古民家はショップやビジターセンター、文化館に生まれ変わるなど、村の雰囲気はそのままに、息を吹き返しました。現在では「香港ユネスコジオパーク」の一部として、自然を愛するハイカーやエコツーリストが訪れる人気の場所となっています。

客家の伝統料理も楽しみのひとつ
客家の伝統料理も楽しみのひとつ

村を訪れると、客家の村ならではの造りに気づくでしょう。その特徴のひとつは「圍(ワイ)」と呼ばれる壁。200軒を超える家々が集まる村全体をひとつの壁が取り囲んでいるのです。
正面の門をくぐり、村の中へ。きれいに並んだ民家とその間を通る細い道は、歩くだけでもエキゾチックな雰囲気を感じられます。車が通らないせいか、時間の流れも緩やか。
散策していると、商店や屋台から、客家の伝統料理の香りが漂ってきて、食欲を誘います。客家料理と言えば代表的なのが、ソルティチキン「塩焗鶏(ヤムクッカイ)」や漬物と一緒に煮込んだ豚の角煮「梅乾扣肉」、鶏粥など。文化を理解するためにもぜひ試してみてください。

村を守る「風水林」。ユニークな古木にも注目を
村を守る「風水林」。ユニークな古木にも注目を

客家の村のもうひとつの特徴として、集落の後方にある「風水林」があります。これは、幸運を招くための風水の考えによるものであると同時に集落の安全のための知恵でもあります。
客家の集落は山沿いにあることが多く、恐れているのが鉄砲水や崖崩れ、洪水などによる被害。そんな災害から村を守るために考え出されたのが、この風水林なのです。
荔枝窩の客家村の風水林には、100種類以上の植物が見られ、中には樹齢100年のモミジバフウや五指樟樹など、思わず写真に収めたくなるユニークな古木にも出会えます。

マングローブの林と「白花魚藤木步道」

マングローブの林と「白花魚藤木步道」
湿地帯に根を張り巡らすマングローブ

村を出て、近くを流れる小川沿いを歩いて行くと、荔枝窩のもうひとつの見どころであるマングローブの群生地にたどり着きます。ここは香港最大級の湿地帯で、香港に自生する8種類のマングローブすべてが見られます。中でも高さ15mにもおよぶ「サキシマスオウノキ」には注目です。
南国情緒を感じるマングローブの林。複雑に張り巡らされた根を見ると、この林がどれだけ長い時間をかけてできたのかを想像することができるでしょう。

森の中を通る「白花魚藤木步道」
森の中を通る「白花魚藤木步道」

マングローブの林の近くには、「白花魚藤木步道(White-flowered Derris Boardwalk)」と呼ばれる木製の遊歩道があります。その名が示す通り、白い花をつける「デリス」のツタが巻き付いた木々など、長い年月を経て作られてきた自然の風景に触れることができます。この周辺には、希少種であるシロスソビキアゲハをはじめ、推定112種の淡水昆虫が生息しているので、注意深く観察してみましょう。

自然と共存する村を尊重してマナーを守って観光しよう
自然と共存する村を尊重してマナーを守って観光しよう

最後に、荔枝窩を訪れるにあたって注意点を。荔枝窩はフェリーを利用してアクセスするのが一般的ですが、フェリーの本数はとても少ないので、事前にチェックして乗り過ごさないように気を付けて。また、自然と共存する客家の文化を尊重して、マナーある行動を心がけましょう。

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■荔枝窩へのアクセス
MTR「大学(University)」駅B出口より、番号「272K」のバスで1つ目の停留所「馬料水公衆碼頭 (Ma Liu Shui Public Pier)」で下車。徒歩で100m先のフェリーターミナル「馬料水三號梯台(Ma Liu Shui Landing No. 3)」へ向かい、「荔枝窩(Lai Chi Wo)」行きのフェリーで約75分。
※フェリーは主に土曜、日曜、祝日に運航。本数が少ないので、事前にウェブサイトで確認を。
・URL: https://www.td.gov.hk/en/transport_in_hong_kong/public_transport/ferries/kaito_services_map/service_details/index.html#k16

■香港の自然をもっと知りたいなら
・URL: https://www.discoverhongkong.com/jp/explore/great-outdoor/wellness.html

※当記事は、2022年3月24日現在のものです

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年3月24日現在、国によってはいまだ観光目的の渡航が難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。

筆者

地球の歩き方観光マーケティング事業部

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