【後編】地球の歩き方×世界遺産検定コラボ記念鼎談! 推しの国内世界遺産&コラボ図鑑の注目ポイント

公開日 : 2022年07月28日
最終更新 :
後編は今すぐ行ける日本の世界遺産について語ってもらいました
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「旅の図鑑」シリーズから、地球の歩き方と世界遺産検定事務局がコラボした『世界遺産の歩き方 学んで旅する!すごい世界遺産190選』が新たに登場! 7月21日(木)の発売を記念して、世界遺産検定事務局のおふたりと「地球の歩き方」編集長の鼎談が実現しました。後編は日本にある世界遺産や新刊の見どころをお届けします。

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【前編】地球の歩き方×世界遺産検定コラボ記念鼎談! 今年こそ行きたい注目の旅先&海外の世界遺産
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プロフィール:

<写真・左>
宮澤 光さん
世界遺産アカデミー主任研究員。大学院で文化人類学の研究をしながら、世界遺産関連の書籍監修や専門校閲を務めたことがきっかけで、2008年より現職。フランスに精通しており、なかでもいち押しは「巡礼の町」ヴェズレー。

<写真・中央>
二見 咲穂さん
世界遺産検定事務局スタッフ。大学時代にアラビア語を専攻し、パレスチナやヨルダンへの留学経験あり。新卒で新聞社に入社後、海外ともっと近い仕事をしたい気持ちが芽生え、世界遺産検定事務局に転職。

<写真・右>
宮田 崇
『地球の歩き方』編集長。会社説明会で、「地球の歩き方」を創刊した当時の社長が旅を語ることに魅力を感じ、入社してはや21年。世界遺産条約の理念が生まれるきっかけとなったエジプトのアブ・シンベル神殿がおすすめ。

<聞き手>曽我 将良/「地球の歩き方」観光マーケティング事業部

“東洋のガラパゴス”とも呼ばれる「小笠原諸島」
“東洋のガラパゴス”とも呼ばれる「小笠原諸島」

――宮田さんは、国内にも思い入れのある世界遺産があると思うんですけど。

宮田:小笠原諸島、ですね。『地球の歩き方』で「島旅シリーズ」っていうものを出していまして。現地に行って、地元の人たちに案内してもらった情報や地元の人たちの引き出しを開けて作ったもので、いちばん最初に出したのが「小笠原」なんです。

――最初に発売されたのは2011年7月ですね。

宮田:発売のちょうど2年前、皆既日食が日本で見られるってなったときにツアーを探したら、どこも高くって。観測できるポイントをたどると、小笠原にぶつかることが分かったんだけど、全然ニュースになっていなかったんですよ。それで、小笠原行きのフェリーを見たら、4万6000円で往復が空いてたの。これだ! って思って、漁船の一覧もらって観光協会に電話したら、「家族で見に行くから、ウチの船に乗って行け」と言ってくれるんで、港から家族がやっている漁船に乗せてもらって、皆既日食を見に行ったんだよね。

――初の小笠原、どうでしたか?

宮田:皆既日食はもちろんすごくよかったんだけど、小笠原の人たちすごく優しかった。ああ、これ何でガイドブックないんだ、と。だったら自分が作ろうと思って調べ始めたら、小笠原が世界遺産の登録リストに入ってることに気が付いて。世界遺産への登録が発表された直後に発売したら、ニュースでめっちゃ流れるし、便乗して売れるんじゃないかというよこしまな気持ちもあり……。そうしたら、まぁ、売れたんですよ(笑)。でも、本当に私がいいなって思った小笠原をぎゅっと詰め込んで、それが世界遺産になったってことでいうと、すごく思い入れのある世界遺産ですね。

「小笠原」ガイドブックの制作秘話とおすすめグルメをご案内

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小笠原とハワイ、まさかの共通点があった……?

宮田:ちなみに、当時私はハワイ編の担当をしていたので、『地球の歩き方 ハワイ』とか「太平洋/インド洋の島々&オセアニア」関連のタイトルが並ぶ最後に、こっそり「小笠原」って感じで作れたらなぁって、上司とふざけてたんですよ(笑)。「オガサワラ」って、カタカナにしたらばれないかなと。だって、当時は片道25時間半かかったの。25時間半っていうと、南米に着いてるんですよ。距離的にはそのくらいしんどい旅なので、海外版と一緒でもいいんじゃないかなって思ったんですよ。さまざまな問題で、日本の領土じゃない時期だったりセンシティブな歴史もあるので、結果的には単行本で出したんですけど。

宮澤:実は、小笠原とハワイって同じポリネシアの文化圏なんですよ。

宮田:来た!!(笑)

宮澤:だから、ハワイ編の横に小笠原って入れても……(笑)。

宮田:当時の上司に聞かせたい! いい線までいってたってことですね。

宮澤:ポリネシア文化圏というか、その影響をかなり受けているんですよ。小笠原に最初にやって来た人は、ハワイから来た人なので、文化交流は絶対にあったはずだし。もしかしたら当時は、日本本土よりも交流があったんじゃないのかな、と思います。

小笠原のおすすめスポットを宮田さんが紹介します!
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二見:実は私、この夏に小笠原に行こうと思っているんですよね……(笑)。

宮田:本当ですか!!

二見:そうなんですよ、ただ、ちょっと船酔いしやすい体質で。

宮田:意外といけますよ。大きい船での~んびり揺れるんで。それに合わせて、おんなじタイミングでシンクロしていくと、そんなに酔わない。

――今は24時間でしたっけ。

宮田:そう、早くなった。25時間半もかかってたのに、なんと24時間に! 24時間っていわれると長いんですけど、前に行ったことある人からすると、めっちゃ縮まった感じがする(笑)。帰りの便が1時間半延びると、それだけ最後に楽しめるので。もう1回ランチ食べようかな、とか。

――小笠原っていうと、名物は海鮮とか海のもの?

宮田:そうですね。サメバーガーは白身で淡白でけっこうおいしかったです。あとは、漬けですね! 島寿司だったら「丸丈」に行ってみて。大将のきんちゃんがすごくおもしろい人なんで、そこで話を聞いたりして。小笠原のありとあらゆるものが食べられるから、入り口は絶対その居酒屋がいいんじゃないかな。ぜひ行ってください、おすすめです。

3人が揃って推す「奈良」の魅力を語り尽くす!

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――宮澤さんはいかがですか?

宮澤:和歌山県の熊野本宮大社ですかね。僕は霊感もまったくないし、普段はスピリチュアルなものとかも興味ないんですが、明治時代まで熊野本宮大社があったとされる大斎原(おおゆのはら)に行ったときには、空気が変わった感じがしたんですよね。まさに、神様のなにかを感じるというか。当時は川の中州にあったので、川にびちゃびちゃ入りながら、体を清めて行く場所だったんです。大斎原までは10分くらい歩かなきゃいけないんですが、最初に神様が降り立った場所にも行ってもらえるといいなって思いますね。夏に特におすすめです。

二見:私は、奈良県なんですけど。早朝の春日大社の参道がめちゃくちゃ好きで。早朝ってあんまり人がいないんです、というか、鹿と私しかいない(笑)。さっきの宮澤さんの話じゃないですけど、なんかすごく神聖なものを感じるんですよね。鹿が遠くからこちらを見つめている視線を感じながら、本殿への参道を歩いている瞬間に、私、異世界に向かっているのかな、みたいな。そういうわくわくした気持ちと、あの空気感がすごく好きで。京都派の人にもぜひおすすめしたい場所です。

宮田:鹿は神の使いですからね。

「春日大社」は縁結びのご利益があるとされる人気のスポット
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宮田:わかるなぁ。私も、奈良派なんです。奈良は都であることを放棄したから、京都ほど構えなくていいっていうか。だからこそ、明治時代に入って開国したときに、奈良の仏教建築がボロボロになって滅びかけたんですよね。そのとき、外国から入ってきた人たちが保護活動というか、今でいう世界遺産と同じやり方で奈良を守ったんですよね。その結果、今でも建築や仏像が見られるっていうのは、感慨深いものがありますよね。

宮澤:僕も奈良が好きでよく行くのですが、友人に吉野の竹林院群芳園のお孫さんがいて、そこに泊めてもらって吉野をじっくり見てまわった時に吉野の自然と文化が一体になっている姿が大好きになりました。

宮田:奈良は京都に行ったときに日帰りで立ち寄る、みたいな立ち位置になりがちなんですけど、もったいない。もうちょっとやれるよ、と思ってます。

――中学の時の修学旅行、2泊3日でずっと奈良でしたよ。明日香村に2泊でした(笑)。

宮田:明日香村2泊は先生のセンスがいいね。明日香村にある「飛鳥寺」の大仏はさ、当時日本に入りたての仏像だから、目が吊り上がっててウルトラマンみたいな顔をしてるよね。ちょうど座ったあたりで目が合うんだけど、あそこの大仏はぐっとくるものがあるなぁ。

宮澤:明日香村の辺りは古墳がおもしろいんです。日本は木の文化イメージですが、かつては石の文化もあったので古墳の石室の彫りかけの石などもゴロゴロ残っているし。友人と奈良の古墳巡りをしたことがあるんですけど、有名な古墳だけじゃなくて、畑の脇の崖の中にも古墳があったりして、中に入るとコウモリが驚いて飛び出してきて僕の顔にバーンって当たったり、面白い経験をいろいろしました(笑)。

宮田:結論、ここ3人で奈良推しということで(笑)。

世界遺産をさらに楽しむために学んでおきたいこと

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金閣寺の見方が変わる宮澤さんの解説

――国内旅行で、事前にした方がよいことや調べておいたほうがいいことってありますか?

宮澤:そこでどういう保護活動が行われていたとか、ボランティアガイドを雇って話を聞くとかは絶対やった方がいいと思います。あと、世界遺産に登録されている価値がどこにあるのかも知っておいた方がいいですよね。例えば、京都の金閣寺って世界遺産なんだけれども、金閣単体では”国宝”じゃなくなっちゃってるんですよ。ただ、庭園の構成物のひとつとして重要名所になっているので、世界遺産としては庭園まで見なきゃいけなくて。もっというと、金閣寺の庭園は、「池泉回遊式庭園」なので、湖面に写っている雲や木だったり、金閣の姿の変化を楽しむ庭園なので、歩きながら見なくちゃ価値が分からないんです。

宮田:そうなんですね! 行こう、京都。

宮澤:予備知識がなくても行けば行ったで絶対楽しいとは思うんですけど、世界遺産としての価値も理解しておくと、もう一歩踏み込んだ楽しみ方ができるかなと思います。

中東の歴史を学んだ二見さんの説得力あるアドバイス
中東の歴史を学んだ二見さんの説得力あるアドバイス

二見:私は、エルサレムに行って感じたことなんですけど。エルサレムの歴史とかに焦点が当たるなかで、やっぱり大事だなって思うのは、エルサレムに限らず世界遺産やその地域、国などの今の情勢やニュースでどういうふうに取り扱われているかを調べてから行った方がいいということですね。現地で起きている政治的なことや紛争などが、これからどういうふうに動いていくのかなっていうのを、少しでも想像を巡らせることができると思うので。

――つまり、世界遺産の“現在地”を知っておくということですか?

二見:そうですね。政治的な扱われ方っていうのも学んでから行くと、見方が変わるので、深みは出ますよね。

宮田: 私は会社に入ってから、たまたま世界遺産のムック本の担当になって、初めて世界遺産というものを学んだんだよね。そうしたら、世界遺産が始まるきっかけの場所がエジプトにちゃんとあって(詳しくは前編参照)、世界遺産に認められると観光客がわっと増える、みたいな単純な話じゃないんだって、そこで初めて気が付いたわけ。学生時代にけっこう旅してきた方だけど、世界遺産がなんぞやっていうのは、旅人の時はあまり考えたことがなかったし、正直ほとんど知識を持ち合わせてなかった。だから、よほどきちんと伝えていかないと、世界遺産ってどういうものなのかっていうのは、まだまだ浸透していかないのかなとは思うな。

『世界遺産の歩き方』の要注目ポイント&賢い使い方

『世界遺産の歩き方』の要注目ポイント&賢い使い方
旅の話はまだまだ尽きません……!

―最後に、今回のコラボ図鑑のおすすめのポイントや「こう使ってほしい」みたい思いがあればお願いします。

二見:世界遺産検定のテキストには、検定で学べる知識は書いてあるんですけど、そこにどうやって行けばいいのか――例えば、どこどこの駅で降りるとか、何がこの地域ではおいしいとか、そういう実体験に基づくような話は出てこないんですね。今回発売される『世界遺産の歩き方』では、遺跡までのアクセスやおすすめグルメだったり、世界遺産に登録されていない必見スポットなんかも書いてあるんです。世界遺産だけじゃなくて、“世界遺産への旅”っていうところに焦点が置いてあるので、実際に足を運ぶってことを目的にして、本を活用してもらえたらうれしいです。ページの下部に、実際に遺産に訪れた認定者のエピソードが書いてあるので、世界遺産検定で世界遺産を学んだ方が、どういうふうに実際に訪れて、何を体験したのかっていうのは参考になりますし、ぜひ楽しんでもらえたらと思います。

――(『世界遺産の歩き方』の編集担当に)金子さん、追加でありますか?

金子:二見さんがおっしゃるとおり、世界遺産に訪れた人たちの生の声がすごくリアルで、深い学びにもつながる、とてもいい一冊になったと思っております。

宮澤:現地に行って世界遺産の前で解説を読むって、自分の家で読むのとは全然違うんですよ。見て、その大きさを感じて、もっといえばその日差しの暑さとか、おいしいものでも何でもいいんですけど。そうすることで、学んだことが身につくし、実感するというか。その点で、本当にいいコラボになったんじゃないかなと思います。

地球の歩き方×世界遺産検定コラボ本は好評発売中!

地球の歩き方×世界遺産検定コラボ本は好評発売中!
「学んで旅する」必読の図鑑

今回鼎談に登場している世界遺産アカデミーの宮澤さんや『地球の歩き方』編集長の宮田さんのインタビューをはじめ、日本国内の世界遺産も多数紹介されている『世界遺産の歩き方 学んで旅する!すごい世界遺産190選』は好評発売中! 実際に世界遺産を訪問した検定認定者の体験談やトリビアなども掲載されているほか、名物料理や世界遺産に関連する必見スポットも掲載。世界遺産検定対策にも旅のお供にもバッチリの一冊です。

【前編】地球の歩き方×世界遺産検定コラボ記念鼎談! 今年こそ行きたい注目の旅先&海外の世界遺産
https://news.arukikata.co.jp/column/travel-info/Europe/France/other_cities_in_France/311_585758_1658480139.html?w=311

Text :水野千尋
Photo:渋谷裕理

※当記事は、2022年7月28日現在のものです

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年7月28日現在、国によってはいまだ観光目的の渡航が難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。

筆者

地球の歩き方観光マーケティング事業部

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