フランス北部に誕生して1年!ガラス美術館ミューズヴェール

公開日 : 2017年11月21日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき
ミューズヴェール外観 ©A.Vanlatum
ミューズヴェール外観 ©A.Vanlatum

2016年10月1日誕生したガラス美術館MusVerre(ミューズヴェール)は、フランス北部の村、Sars-Poteries(サール・ポトゥリ)にあります。パリから見ると、真北ではなく、少し東より。北の町Lille(リル)から見ると南東にあたり、ベルギーと国境を接するAvesnois(アヴェノワ)と呼ばれる地域です。

近年建てられる美術館の例にもれず、ミューズヴェールの建築もまた、素晴らしいものです。派手さはないものの、緑多い風景になじむ、近代的でシンプルな外見。ファサードに使われているのは、アヴェノワ独特の「青い石」と呼ばれる石。光線の具合によって、バラ色がかったグレイや、ブルーグレイ、黒に、色味が変わります。

村の歴史にほれ込んだ司祭の情熱

村の歴史にほれ込んだ司祭の情熱

青い石を使ったミューズヴェール外観 ©Ph.Houzé

人口わずか1,500人のこのサール・ポトゥリに、なぜ立派な美術館が建てられることになったのでしょうか?
実はこの村には、1802年から1937年まで、ガラス制作のアトリエがあり、800人もの職人を抱えていました。その後、アトリエが閉鎖するとともに、忘れるともなく忘れられていたこのガラス工芸の過去。それを発見したのが、1958年にこの村に派遣されてきたルイ・メリオー司祭です。アトリエがあったころ、職人たちが休日や余暇の楽しみに作っていたガラス細工を、住民たちの家で目にして感銘を受けたのがきっかけでした。
それらを集めて最初の展覧会を開いたのが1967年のこと。大きな反響を呼び、その後も年に一度のガラス展覧会を開くようになります。これが、ミューズヴェールの前身となったのです。


続いてメリオー氏は、旧穀倉にアトリエを作り、元ガラス職人が、若い世代に技術を伝える場としました。また、1980年代には、国際ガラスシンポジウムなどをこの村で開くようになります。メリオー氏の情熱で育てられたガラス美術館は、1994年からノール県の手に渡り、その後も少しずつ膨らんで、2016年の新建築によるミューズヴェール誕生へとつながったのです。

2つのパートに分かれる常設展

2つのパートに分かれる常設展

職人たちの余暇作品 ©Ph.Robin

常設展は、大きく二つの部に分けられます。
まずは、美術館誕生の経緯を説明し、1801~1937年にかけて、ガラス職人たちが余暇に作ってきたガラス細工を展示する一続きの部屋。所蔵800点のうち260点ほどが並びます。名もないアーティストによるものですが、どれも仕事を離れて自由に作られただけあって、生き生きと朗らかな息吹を感じる作品たちです。自分たちの子供や友達へのプレゼント用に作られたものがほとんどで、やわらかい色の使い方や、大胆な組み合わせなど、ひょっとして、この余暇作品こそが、職人たちの腕の揮いどころだったのでは、と思わせます。

現代ガラス美術品 ©Ph.Robin

もうひとつは、現代ガラス美術品の並ぶ部屋。明るく太陽光の良く入る大きなスペースに、現代作品約230が並びます。見ていると、ガラスという同じ素材で、こんなに様々な形や質感を表現できるのかと驚かされます。今にも滴り落ちる液体のように見えるものや、風が吹けば、柔らかなドレープがそよぐに違いないと思うガラスのカーテンなど、どれを見ても、ガラスの可能性を追求した現代アーティストの熱意を感じずにはいられません。

公開中の特別展

公開中の特別展

ビュルグ夫妻コレクションより Ivan Mares “Spindle”, 2005 ©P.Louis

2017年10月7日からは、開館1周年を記念して、Gigi & Marcel Burg(ジジ&マルセル・ビュルグ)コレクション展が開かれています。現代美術蒐集家として知られるマルセル・ビュルグ夫妻は、2008年までガラス作品に重きをおいた時期がありました。そのコレクションから、選りすぐった作品を展示するのが今回の特別展です。会期は、2018年3月4日まで。

ビュルグ夫妻コレクションより Jaroslav Matous “Kiwi”, 2008 ©P.Louis


DATA
Musverre (ミューズヴェール)
住所:76, rue du Général-de-Gaulle, 59216 Sars-Poteries, France(MAP)
電話番号:+33 (0)3 59 73 16 16
開館日:火曜日~日曜日の11時~18時
定休日:月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
公式サイト


ミューズヴェールのあるサール・ポトゥリに近いフランス国鉄の駅は、Maubeuge(モーブージュ)、あるいは、Aulnoye-Aymeries(オールノワ・エムリ)。モーブージュ駅からは、436番のバスで約50分。Atelier du Verre(アトリエ・デュ・ヴェール)停留所で降りてください。オールノワ・エムリ駅からは、407番のバスで約20分。Musverre(ミューズヴェール)停留所で下車。

便数はあまり多くありませんので、帰りの便も必ず調べてから、お出かけください。

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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