ロッテルダムの魅力Part2:レトロ&ヒップな港町を巡る

公開日 : 2019年10月15日
最終更新 :

コンテナ港として世界11位の規模を誇るロッテルダム。14世紀に漁港として発展し、18世紀の東インド会社の台頭、アジアへの新航路開拓、後の19世紀にロッテルダムと北海をつなぐ新水路の完成と、時代とともにオランダの発展を支えてきました。常にモノやヒトが動いているからか、ロッテルダムは特有のエネルギーに満ちています。

そんなロッテルダムの魅力を伝えるPart2では、ロッテルダムがロッテルダムたらんとする「港」に光を当て、昔ながらの面影を残すエリア、ヒップなスポットとして注目を浴びる埠頭と、「新」「旧」の顔をご紹介します。

かつての港町の面影をたどる――デルフスハーヴェン

かつての港町の面影をたどる――デルフスハーヴェン
運河沿いには倉庫を兼ねた昔ながらの家が並ぶ

では、「旧」のほうから訪ねてみましょう。行き先はデルフスハーヴェン(Delfshaven)です。お隣の市、デルフトのような名前ですが、ロッテルダムです。名前はデルフトの港だった名残です。

Part1でお伝えしたおもしろい建物群が並ぶブラーク駅(Blaak)からメトロで約6分、コールハーヴェン駅(Coolhaven)に降り立ちます。

駅から8分ほど歩き、デルフスハーヴェンに入る直前で橋を渡ります。運が良ければ、跳ね橋が上がって船が通行する瞬間に出くわすかもしれません。橋が元に戻るまでには5分くらいかかるので、道を急ぐ地元の人にとってはバッドタイミングですが、滅多にお目にかかれない光景なので、観光客にとってはラッキー(笑)。

車道と思いきや、実は巨大な跳ね橋!
車道と思いきや、実は巨大な跳ね橋!

ロッテルダムは、第二次大戦時、港を中心に大規模な爆撃を受けました。焼け野原から立ち上がることでユニークなビルが立ち並ぶ今のロッテルダムができあがったわけですが、奇跡的に戦火を逃れた町もありました。デルフスハーヴェンもそんな町うがのひとつで、ロッテルダムの面影をしのぶ場所として人気があります。

デルフスハーヴェンがロッテルダムのなかでもことさら大切にされているのは、たたずまいのみならず、ここから新大陸アメリカへの船出をしたという歴史をもっていることもあります。その歴史の出発点である巡礼始祖教会(Oude of Pelgrimvaderskerk Rotterdam-Delfshaven)があるエリアへと歩き、運河を左岸から右岸へとのんびり散歩してみましょう。

左の風車はかつて蒸留酒に使う麦芽を挽いていた
左の風車はかつて蒸留酒に使う麦芽を挽いていた

1620年、清教徒たちが巡礼始祖教会に集まります。清教徒はオランダ人ではなく、イギリス人。英国国教会の弾圧を逃れてきた人たちで、ここからイギリスのサウサンプトンに行き、メイフラワー号に乗り換えてアメリカを目指しました。

巡礼始祖教会
巡礼始祖教会
対岸から巡礼始祖教会を眺める
対岸から巡礼始祖教会を眺める

■ 巡礼始祖教会
・住所: Aelbrechtskolk 20, 3024 RE Rotterdam
・URL: https://www.oudeofpelgrimvaderskerk.nl/en/

教会横の地ビールレストラン――De Pelgrim

教会横の地ビールレストラン――De Pelgrim
小路を挟んで気持ちよさそうなテラス席が

教会の横には外テラスがあるレストランがあります。De Pelgrimというビアレストランです。

400年以上の歴史をもつ建物は、市役所、警察署など、時代と共に様々な使われ方をし、1996年にロッテルダムの地ビールを楽しめる店としてオープンしました。建物内で定期的にビールを醸造しています。8人以上のグループなら、敷地内でデルフスハーヴェンの歴史を織り込みながらの地ビールツアーを催行してくれます。

10種以上の地ビールが。写真はベルジャントリペルのMayflower
10種以上の地ビールが。写真はベルジャントリペルのMayflower
ビールのおともはビタバレン(丸形の小さなコロッケ)!
ビールのおともはビタバレン(丸形の小さなコロッケ)!

■ Stadsbrouwerij de Pelgrim
・住所: Aelbrechtskolk 12, 3024 RE Rotterdam
・営業時間: 水~土曜12:00~24:00(日曜~22:00)
・定休日: 月、火曜
・URL: https://www.pelgrimbier.nl/

フードアントレプレナーが集うウェアハウス――Fenix Food Factory

フードアントレプレナーが集うウェアハウス――Fenix Food Factory
5分ほどの船旅

レトロな港町を楽しんだ後は、ヒップな埠頭に移動しましょう。トラムや地下鉄を乗り継いでいく方法もありますが、天気がよければ水上バスがおすすめ。ビアレストランDe Pelgrimからは約20分(1.3キロ)ほど歩きますが(トラムもあり)、St. Jobshavenという船着き場から目的地のKatendrechtまで水上バスが運行されています。約5分と短い船旅ですが、水上からみるロッテルダムのビル群もなかなかのもの。

黄色い屋根のボートは水面を豪快にホッピングする水上タクシー
黄色い屋根のボートは水面を豪快にホッピングする水上タクシー

着いた埠頭のKatendrechtは、かつては売春宿が立ち並び、ポン引きがうろつく物騒なエリアでした。2010年代、ロッテルダム市が再開発に着手、ドックヤードがギャラリーになったり、古いレストランからこぢんまりとしたおしゃれなカフェなどになったりするごとに雰囲気が変わっていき、いまや殺風景なドックヤードがヒップ! とすっかりおしゃれなエリアになっています。その中心にあるのが、2014年にオープンしたFenix Food Factoryというフードコートです。

Fenix Food Factoryが人気なのは、ロケーションもさることながら、ロッテルダマー(ロッテルダムの人々という意味)のフードアントレプレナーだけを集めたことも大きいと思います。ロッテルダマーたちは、独立心旺盛で、商売熱心、そして地元愛がとても強いのです。コート内は地ビールやチーズ農場のチーズ、ベーカリー、精肉、本など個人商店がごちゃっと集まっており、買ったり、食べたり、休んだりすることができます。

ロッテルダムの地ビールKaapse Brouwersの醸造所<br />
ロッテルダムの地ビールKaapse Brouwersの醸造所<br />
雑然とした雰囲気がまたよい
雑然とした雰囲気がまたよい

■ Fenix Food Factory
・住所: Veerlaan 19D, 3072 AN Rotterdam
・営業時間: 10:00~19:00(土・日曜~18:00、金曜~20:00)店やレストラン・バーにより異なる
・URL: http://www.fenixfoodfactory.nl/

人々はここからニューヨークに旅立った――ホテル・ニューヨーク

人々はここからニューヨークに旅立った――ホテル・ニューヨーク
ホテル・ニューヨーク

Fenix Food Factoryから橋を渡った対岸に、ホテル・ニューヨークという四つ星ホテルがあります。ロッテルダムなのになぜニューヨークなのか? という疑問がわくかもしれません。それはこの建物の歴史にあります。

ホテルのレセプション
ホテルのレセプション

この建物はホーランドアメリカライン(Nederlandsch Amerikaanse Stoomvaart Maatschappij)というクルーズ会社のオフィスでした。ビルが完成したのは1917年のことで、ここからオランダの人々はニューヨークへと旅立ったのでした。ホーランドアメリカラインは1971年に拠点をシアトルに移すために建物を売却、1993年にホテルニューヨークとしてオープンします。ちなみに、ホーランドアメリカライン社は今もシアトルで営業を続けています。

1900年代前半、オランダから大型客船でニューヨークに行くのはリッチな層だったに違いありません。贅沢でクラシカルなディテールと古さに新しさを見出す現在の風潮がとけあい、独特の雰囲気をつくりだしています。天気がよい日は、海沿いロケーションとレトロ&おしゃれな雰囲気にひかれて、宿泊客のみならず、ランチやディナーを楽しむ人でにぎわいます。

展示物もおかれていて、この建物の歴史がたどれるようになっています
展示物もおかれていて、この建物の歴史がたどれるようになっています
400人が収容できるレストラン
400人が収容できるレストラン

■ Hotel New York
・住所: Koninginnenhoofd 1, 3072 AD Rotterdam
・営業時間(レストラン): 7:00~01:00
・URL: https://hotelnewyork.com/food-beverage/

協力: オランダ政府観光局
https://www.hollandflanders.jp/

TEXT・PHOTO: 水迫尚子(オランダ在住ライター)

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。